再発・難治性造血器腫瘍に対する治療の切り札としてキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法が期待され、複数の製剤が市販されています。CAR-T細胞療法では、まず原料となるT細胞を患者さんから採取(白血球アフェレーシス)することは共通しますが、採取手順における規定に製剤間で相違点が多く存在するため、規定確認に多くの労力が必要で、また製剤毎の特徴に沿って白血球アフェレーシスを効率的に運用する必要があります。
城友泰 医学部附属病院助教、新井康之 同講師、長尾美紀 同教授、北脇年雄 同助教、山下浩平 同准教授、髙折晃史 同教授らの研究グループは、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫に対するCD19標的CAR-T細胞療法の3つの製剤(キムリア®、ブレヤンジ®、イエスカルタ®)の白血球アフェレーシス80例について、製剤毎の特徴を比較しました。白血球アフェレーシス終了までに、イエスカルタ®では他の製剤よりも多くの血液処理量と処理時間を要していることが明らかになりました。また、白血球アフェレーシスによって採取された細胞収量は、イエスカルタ®で他の製剤よりも多いものの、症例毎にばらつきが大きく、末梢血T細胞数が十分に多い症例では、血液処理が過剰になっている可能性が示唆されました。本結果をもとに、CAR-T細胞療法における白血球アフェレーシスの計画を製剤種毎に最適化できるとともに、将来的には製剤種間の規定の相違を少なくし標準化するための臨床的なデータになることが期待されます。
本研究成果は、2025年6月6日に、国際学術誌「Cytotherapy」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.jcyt.2025.06.002
【書誌情報】
Tomoyasu Jo, Toshio Kitawaki, Takashi Sakamoto, Chisaki Mizumoto, Junya Kanda, Momoko Nishikori, Kouhei Yamashita, Miki Nagao, Akifumi Takaori-Kondo, Yasuyuki Arai (2025). Yield-driven approach optimizes apheresis of CD19 CAR-T cell therapy for patients with lymphoma. Cytotherapy.