原始紅藻Galdieria sulphuraria光化学系I集光性色素タンパク質超複合体の立体構造解析

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 熊沢穣 農学研究科博士課程学生、伊福健太郎 同教授、長尾遼 静岡大学准教授、加藤公児 岡山大学特任准教授、沈建仁 同教授、堂前直 理化学研究所ユニットリーダーらは、極限環境に適応した原始紅藻Galdieria sulphuraria NIES-3638由来PSI-LHCIの立体構造をクライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析により2.19Åの分解能で明らかにしました。その結果、本種のPSI-LHCIはPSI単量体と7つのLHCIサブユニット(LHCI-1~7)で構成されており、進化的に保存された結合様式を持つことが明らかになりました。また、PSIのA1電子受容体として一般的に見られるフィロキノンが検出されず、代わりにベンゾキノン様分子が存在することが示唆されました。さらに、PSIに結合するLHCIの分子系統解析の知見をもとに、本種が祖先的な紅藻の特徴を保持しつつ進化してきたことが示されました。本研究の成果は、紅藻におけるLHCI結合パターンの保存性と多様性を解明し、特に、RedCAPというタンパク質がLHCIの一部を構成し、PSIと特異的に相互作用していることを明らかにしたもので、紅藻の光合成システムの進化的適応を理解する上で重要な知見を提供しました。

 本研究成果は、2025年5月16日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。

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G. sulphuraria PSI-LHCI構造
研究者コメント
「紅藻の光化学系Iがどのように進化し、他の光合成生物と異なる特性を獲得したのかを明らかにすることが本研究の目的でした。紅藻の祖先がどのような生物だったのか不明なため、その祖先に最も近いといわれている原始紅藻G. sulphurariaのPSI-LHCI構造を高解像度で解析し、PSI-LHCIの分子進化の過程を理解する上で重要な知見を得ることができました。光合成生物の適応進化を考える上で興味深い発見となりました。」(長尾遼)
研究者情報
研究者名
Minoru Kumazawa
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1126/sciadv.adv7488

【書誌情報】
Koji Kato, Minoru Kumazawa, Yoshiki Nakajima, Takehiro Suzuki, Naoshi Dohmae, Jian-Ren Shen, Kentaro Ifuku, Ryo Nagao (2025). Structure of a photosystem I supercomplex from Galdieria sulphuraria close to an ancestral red alga. Science Advances, 11, 20, eadv7488.