授乳婦でのリバーロキサバン内服の安全性―母乳薬物移行性及び乳児曝露量の測定解析―

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 エコノミークラス症候群として知られる静脈血栓塞栓症では、抗凝固療法とよばれる治療が行われます。一方で、授乳婦では母乳を介した乳児への薬剤暴露が心配されます。授乳婦に現在よく使用されるワルファリンは、頻回の採血が必要となり、授乳婦にとって大きな負担となります。近年、これに替わる負担の少ない新しい薬剤が登場しましたが、これらの薬剤は授乳を介して乳児に影響する可能性も否定できず、安全性が確立していませんでした。

 この度、山下侑吾 医学部附属病院助教、尾野亘 同教授、平大樹 同講師らの研究グループは、新しい薬剤であるリバーロキサバン服用中の2名の授乳婦を対象に、母体の血中薬物濃度および母乳中薬物濃度に加えて、乳児の血中薬物濃度を測定し、薬物動態モデル解析に基づいた検証を行いました。結果、乳児血中からはリバーロキサバンは検出されず、薬物動態のプロファイルからは、リバーロキサバンは授乳婦に対して安全に投与可能であることが示されました。今後、授乳婦に同薬剤を安心して使用する事も可能となり、その意義は大きいと考えられます。

 本研究成果は、2024年4月5日に、国際学術誌「Thrombosis Research」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「周産期に静脈血栓塞栓症を合併した患者さんには、従来は、産後の新生児のケアに大変な授乳期にワルファリンを用いる事が多く、頻回の病院受診や採血が必要となるため医療従事者側としても大変心苦しい所もありました。今回の検討結果により、リバーロキサバンが授乳婦に比較的安全に使用できる事が示されたため、客観的なデータとともに安心して患者さんにその選択肢を提示できる事が出来、現場の医療従事者としては大変大きな意義があると考えています。今回、善意の想いで御協力頂いた2名の授乳婦の患者さんにも厚く御礼申し上げたいと思います。」

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