オートファゴソーム標準形態の実験的決定と数理モデル―オートファジーを司る膜構造体の形の特徴を実験と理論で解明―

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 境祐二 医生物学研究所特定准教授(研究当時:東京大学助教)、水島昇 東京大学教授らの研究グループは、オートファジーを仲介するオートファゴソームの形成過程を三次元電子顕微鏡法により網羅的かつ統計的に調査することで、その標準形態を決定しました。その結果、形成中のオートファゴソームは、今まで思われていたような単純な部分球ではなく、縦に細長く伸びたカップ状であり、その縁は外側に反り返ったカテノイド曲面であるという特徴をもつことがわかりました。

 この形態的特徴を理解するために、膜の曲げ弾性エネルギーに基づく数理モデルを構築しました。得られた数理モデルは、電子顕微鏡法で観察されたオートファゴソーム形成時の形態を定量的に再現しました。これらの結果から、オートファゴソーム膜は非常に柔軟であり、その形成過程の形態的特徴は主に膜の曲げ弾性エネルギーの最小化によって決定されることが示唆されました。本研究成果は、一見複雑に見えるオートファジーの膜動態が、単純な物理機構に基づく理論モデルによって解析できることを示しています。今後、膜動態の計測とそれに基づく数理解析とを組み合わせることで、オートファジーのメカニズムについてより統合的な理解が進むことが期待されます。

 本研究成果は、2024年1月2日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

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研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-023-44442-1

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286618

【書誌情報】
Yuji Sakai, Satoru Takahashi, Ikuko Koyama-Honda, Chieko Saito, Noboru Mizushima (2024). Experimental determination and mathematical modeling of standard shapes of forming autophagosomes. Nature Communications, 15:91.

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