小児の急性骨髄性白血病の治療成績が向上 微小残存病変(MRD)の測定結果を利用した最適な治療の実現へ~3年無イベント生存率63%、3年全生存率80%に~

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 足立壮一 医学研究科教授、平松英文 同講師、田中司朗 同特定教授、富澤大輔 国立成育医療研究センター診療部長、岩本彰太郎 三重大学准教授らが中心となり、日本小児がん研究グループ(JCCG)が小児急性骨髄性白血病(AML) に対する臨床試験(臨床試験名:AML-12)を実施しました。本試験では18歳までの小児AML患者を対象に、初回の化学療法コースにおいて、AML治療で最も重要な抗がん剤であるシタラビンの大量療法と通常量療法の優劣について無作為比較試験が行われました。さらに、白血病の再発予測因子として、通常の検査法では判定が困難な微小なレベルの残存白血病をフローサイトメトリー法で検出する、微小残存病変(MRD)の意義を調べました。その結果、過去に世界中で報告された小児AMLの治療成績の中でも最良の成績が得られたほか、MRDが最も強力な再発予測因子であることが明らかになりました。本試験で得られた成果により、多くの小児AMLの患者が最適な治療を受けることが可能になり、今後の治療成績の向上と晩期合併症の軽減の両立につながることが期待されます。

 本研究成果は、2023年11月6日に、国際学術誌「Leukemia」にオンライン掲載されました。

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AML-12臨床試験の概要
研究者のコメント

「急性リンパ性白血病において微小残存病変の存在が強力な予後因子であることが見出され、本邦でも保険による検査が可能になっていますが、急性骨髄性白血病では検査法の違いなどから臨床応用が難しい状況でした。本研究により小児急性骨髄性白血病におけるフローサイトメトリー法での微小残存病変測定の意義と実効性が全国規模の研究で初めて明らかになりました。今後、さらなる治療成績の向上に役立つことが期待されます。」(平松英文)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41375-023-02075-9

【書誌情報】
Daisuke Tomizawa, Jun Matsubayashi, Shotaro Iwamoto, Hidefumi Hiramatsu, Daisuke Hasegawa, Hiroshi Moritake, Daiichiro Hasegawa, Kiminori Terui, Asahito Hama, Shin-ichi Tsujimoto, Nobutaka Kiyokawa, Hayato Miyachi, Takao Deguchi, Yoshiko Hashii, Yuka Iijima-Yamashita, Tomohiko Taki, Yasushi Noguchi, Kazutoshi Koike, Katsuyoshi Koh, Yuki Yuza, Akiko Moriya Saito, Keizo Horibe, Takashi Taga, Shiro Tanaka, Souichi Adachi (2023). High-dose cytarabine induction therapy and flow cytometric measurable residual disease monitoring for children with acute myeloid leukemia. Leukemia.