ペプチドの特定部位を狙って変換する-N-クロロアミドを経由するペプチドの位置選択的C–H塩素化-

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 南條毅 薬学研究科助教、松元彩香 同修士課程学生(研究当時)、大下拓真 同修士課程学生(研究当時)、竹本佳司 同教授らの研究グループは、ペプチド側鎖内の狙ったC–H結合を選択的に変換し、中分子医薬品の合成に有用な非天然型ペプチドを迅速に供給する新しい手法を開発しました。

 異常アミノ酸や大環状骨格といった特殊構造を含有する非天然型中分子ペプチドは、従来の天然型ペプチドが抱える欠点を克服した新たな医薬品候補分子として近年大きな注目を集めています。しかし、それら非天然型ペプチドの調製には多くの場合、天然型の市販原料を用いた煩雑な合成が必要であり、その効率性の改善が急務でした。本研究ではペプチドを塩素化して活性化した後に、分子内で水素原子移動(HAT)反応を起こすことで、高効率でペプチド側鎖の狙ったC–H結合のみを良好に塩素化することに成功しました。これにより、ペプチド医薬品候補化合物の誘導体供給を強力に促進することが期待されます。

 本研究成果は、2023年8月18日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「私たちは反応の足掛かりに乏しい『のっぺらぼう』のようなペプチドを化学修飾するための戦略として、ペプチド結合を塩素化して活性化する新しいアイデアを考案しました。当初はそれをどのように実際使ってもらえそうな手法に仕上げるかということで頭を悩ませていましたが、学生さん達の粘り強い検討もあって、既存法でも極めて難しいペプチド内の狙ったC–H結合を綺麗に変換できる手法の実現につながりました。」(南條毅)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1021/jacs.3c06931

【書誌情報】
Takeshi Nanjo, Ayaka Matsumoto, Takuma Oshita, Yoshiji Takemoto (2023). Synthesis of Chlorinated Oligopeptides via γ- and δ-Selective Hydrogen Atom Transfer Enabled by the N-Chloropeptide Strategy. Journal of the American Chemical Society, 145(34), 19067-19075.