バイオミメティクスにつながる異化代謝プラットフォーム―自然に学ぶモノづくりを目指して―

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 槇塚太紀 農学研究科修士課程学生(研究当時)、宋和慶盛 同助教、片山志織 同研究員、北隅優希 同助教、由里本博也 同准教授、阪井康能 同教授、白井理 同教授らのグループは、「Methylorubrum extorquens AM1」というメタノール資化性菌(葉圏共生微生物の1種)由来のギ酸脱水素酵素(FoDH1)の新規変異体を創出し、高効率な異化代謝プラットフォームの構築と共役モデルの実証に成功しました。

 ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、生体内の異化代謝に関わる補酵素で、本補酵素が必要なNAD依存性酵素は酸化還元酵素の約30%を占めます。天然に存在する多種多様なNAD依存性酵素を利用した生体模倣技術(バイオミメティクス)は、バイオ燃料電池やバイオセンサ、バイオリアクタなどの幅広い応用展開が期待されていますが、補酵素であるNADを再生するための異化代謝プラットフォームが必要です。今回、効率的な NAD+/NADH 再生系を実現するために、FoDH1のβサブユニット単独発現体(FoDH1B)の発現系を構築し、直接電子移動型酵素電極反応(DET型反応)によって、NAD+/NADHの再生効率を約2.5倍に改善しました。また、本再生系とNAD依存性酵素の共役にも成功し、グルコース燃焼やグリセロール合成をモデル系として実証しました。さらに、数理解析モデルに基づいてFoDH1BのDET型反応を解析し、NADHおよびNAD+の酸化還元触媒反応における電子移動経路を推定しました。今回の研究成果は、異化代謝を模倣したバイオテクノロジーの創出に向けた共通基盤技術として期待されます。

 本研究成果は、2023年8月1日に、国際学術誌「Electrochimica Acta」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
FoDH1BによるNAD+/NADH再生系とNAD依存性酵素の共役
研究者のコメント

「人類が直面するエネルギー/環境問題に対して、バイオミメティクスが大きなブレイクスルーになると考えています。特に、DET型反応を実現できる酵素に関する基礎研究は、持続的な未来社会を構築する上で、学術的にも社会的にも大きな意義を持ちます。自然が創り出した高度な触媒機能を利活用することで、人類と地球を豊かにする革新的な技術を実現し、研究成果の社会実装に取り組みます。」(宋和慶盛)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.electacta.2023.142954

【書誌情報】
Taiki Makizuka, Keisei Sowa, Shiori Katayama, Yuki Kitazumi, Hiroya Yurimoto, Yasuyoshi Sakai, Osamu Shirai (2023). An Enhanced Direct Electron Transfer-type NAD⁺/NADH Regenerating System Using the Diaphorase Subunit of Formate Dehydrogenase 1. Electrochimica Acta, 465:142954.