機械学習によるがんの苦痛評価方法の開発―機械学習で目に見えない苦痛を見える化―

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 がん患者では、全身状態の悪化で言葉によるコミュニケーションが取れなくなった場合、自分の症状を表現できず、一般の医療従事者も症状評価に難渋することがあります。適切な症状評価ができなければ、苦痛の緩和も十分に行えません。適切な症状評価には緩和ケアに関する修練が必要で、医療現場では緩和ケア専門職による支援が行われています。一方、全国のがん患者数に比べて緩和ケア専門職は非常に不足しています。

 恒藤暁 医学部附属病院教授、嶋田和貴 同特定講師らの研究グループは、機械学習を用いて、がん患者の苦痛のうち、痛みや呼吸困難などの自覚症状を評価する方法を開発しました。自覚症状は会話ができないと客観的には評価困難で、緩和ケア専門職の支援を特に必要とします。本手法は緩和ケア専門職の不足を解決し、全国のがん患者の苦痛からの解放につながる可能性があります。

 本研究成果は、2023年7月26日に、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

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研究者のコメント
「もともと私は地域の人手不足の解消を目指して、呼吸器内科医をキャリアの出発点に選びました。その後の社会の急速な高齢化を背景に、緩和ケアにおける地域の人手不足や偏在による弊害を経験しました。現在は、日々の緩和ケアチーム活動を通じて一般の医療従事者に緩和ケアの知恵や文化が広まることを願っておりますが、より早く全国の患者さんとその周囲の方々に緩和ケアを届ける一助にしたいと考えたことが、本研究の一番の動機です。今後は、IT会社と共同研究中のアプリ試作品を使った臨床研究で、臨床実効性の確認を進める予定です。本邦では医療アプリの開発体制は十分確立されておらず、今回のIT会社との出会いまでにかなり苦労しました。私どもの苦労が、今後の医療アプリの開発の礎のひとつにつながればとも思っています。」(嶋田和貴)
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-023-39119-0

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/284847

【書誌情報】
Kazuki Shimada, Satoru Tsuneto (2023). Novel method for predicting nonvisible symptoms using machine learning in cancer palliative care. Scientific Reports, 13:12088.

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