ソバゲノムの解読―高精度ゲノム解読がソバの過去と未来を紡ぐ―

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 2050年の世界人口は97億と予想され、イネ、コムギ、トウモロコシなどの三大穀物への食料の依存が問題視されています。これに対し、食料としての価値が高いにもかかわらず研究が遅れ、未開発のポテンシャルが秘められたままの「孤児作物」への関心が増しています。次世代シーケンシング技術による孤児作物のゲノム解読は、その効率的な育種を促進し、飢餓の撲滅や栄養改善などのSDGs達成への重要なステップとなることが期待されています。

 安井康夫 農学研究科助教らの国際共同研究グループ(理化学研究所、農業・食品産業技術総合研究機構、千葉大学、京都府立大学、かずさDNA研究所、総合研究大学院大学、中国・雲南農業大学、英国・ケンブリッジ大学など)は、孤児作物の一つであるソバのゲノム配列を染色体レベルで高精度に解読することにより、ソバのゲノムの進化と栽培ソバの起原を解き明かしました。さらに、予測された遺伝子をゲノム編集技術に依存しない手法で改変しました。その結果、これまで世界に存在しなかったモチ性ソバを開発することに成功しました。またソバの繁殖様式を他殖性から自殖性へ転換させることにより、新たな自殖性ソバの開発にも成功しました。本研究で用いられた育種方法は、ゲノム編集技術に未対応な多種多様な孤児作物の改良に貢献することが期待されます。

 本研究成果は、2023年8月10日に、国際学術誌「Nature Plants」にオンライン掲載されました。

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研究イメージイラスト:高精度ゲノム解読が紡ぐソバの過去と未来 (©️星野ロビン)
研究者のコメント

「今回の研究成果は農学、食品科学、そしてゲノム研究の境界を押し広げるものだと思っています。ここから新たな食文化が生み出され、ソバの利用範囲が拡大されると期待しており、とてもワクワクしています。また、同様の研究が多様な孤児作物に展開され、新たな段階への一歩となることを熱望しています。私たちの目標は『孤児作物の可能性を解き放ち、世界の食料問題に挑む!』です。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41477-023-01474-1

【書誌情報】
Jeffrey A. Fawcett, Ryoma Takeshima, Shinji Kikuchi, Euki Yazaki, Tomoyuki Katsube-Tanaka, Yumei Dong, Meifang Li, Harriet V. Hunt, Martin K. Jones, Diane L. Lister, Takanori Ohsako, Eri Ogiso-Tanaka, Kenichiro Fujii, Takashi Hara, Katsuhiro Matsui, Nobuyuki Mizuno, Kazusa Nishimura, Tetsuya Nakazaki, Hiroki Saito, Naoko Takeuchi, Mariko Ueno, Daiki Matsumoto, Miyu Norizuki, Kenta Shirasawa, Chengyun Li, Hideki Hirakawa, Tatsuya Ota, Yasuo Yasui (2023). Genome sequencing reveals the genetic architecture of heterostyly and domestication history of common buckwheat. Nature Plants, 9(8), 1236–1251.

メディア掲載情報

京都新聞(8月11日 22面)、朝日新聞(8月11日 25面)、読売新聞(8月30日夕刊 11面)および日刊工業新聞(9月7日 24面)に掲載されました。