渋滞長を予測する時空間AI「QTNN」を開発―東京都の1時間先の渋滞長予測で誤差40m以下を達成―

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 交通渋滞は、私たちに日々のストレスを与えるだけでなく、日本国内に年間約10兆円の損失をもたらし、さらには温室効果ガス排出量にも影響を及ぼす深刻な問題となっています。この問題を解決すべく、渋滞がいつ・どこで発生するかを予測するAIに世界中から注目が集まっています。竹内孝 情報学研究科助教、鹿島久嗣 同教授と住友電工システムソリューション株式会社のグループは、これから起きる渋滞の場所と長さを予測する新たな時空間AI技術「QTNN」(Queueing-Theory-based Neural Network)を開発しました。

 QTNN最大の特徴は、交通工学の知見に基づいて、混雑の変化と道路網の関係を学習する機能です。警視庁から提供されたデータを用いた、東京都内1098箇所の道路における「1時間先の渋滞長を予測する実験」で、QTNNは平均して誤差40m以下という高精度な予測を達成しました。この結果は、現時点で最先端とされる深層学習手法よりも予測誤差を12.6%も削減することに成功しています。今後は、実環境での本格的な運用に向けて、一部の道路において評価試験を実施し、本AI技術の信頼性の検証を進める予定です。

 本研究成果は、2023年8月6日に、AI分野(機械学習とデータマイニング)の国際会議「The 29th ACM SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining」にて発表されました。

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イラストデザイン:津田 祐果(UMA / design farm)、イラストレーター:米村 知倫
研究者のコメント

「世界中で巻き起こる苛烈なAI研究競争において、日本が得意とする精細なデータ計測技術とドメインへの綿密な知見は、最先端の時空間AI技術と掛け合わせることで世界に先駆ける大きなアドバンテージとなりえると考えます。本研究により、交通渋滞問題に対する新たな解決策が構想され、都市の持続可能性に大きく貢献することを期待します。我々は、今後も信頼性と安全性の高いAI技術の可能性を追求し続けます。」

メディア掲載情報

【DOI】
https://doi.org/10.1145/3580305.3599890

【書誌情報】
Ryu Shirakami, Toshiya Kitahara, Koh Takeuchi, Hisashi Kashima (2023). QTNet: Theory-based Queue Length Prediction for Urban Traffic. Proceedings of the 29th ACM SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining, 4832–4841.

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