新しいDNAクローニング技術の開発―京大学部生研究チームの発見が契機に―

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※ 文中の画像および詳しい研究内容について(PDF)を一部修正しました。(2023年5月19日)

 「DNAクローニング」は、分子生物学の基幹技術です。長い間、この技術のためにはDNAを切る「はさみ」や「のり」を使った複雑な工程が必要でした。最近になって「相同組換え」を利用したシンプルな方法が使われるようになっていますが、高価な試薬が必要なため多くの研究室の予算を圧迫していました。

 学部生による研究チームiGEM Kyotoのメンバー、Alexander Y. Liu 理学部学生、古賀大翔 同学生、合屋智尋 医学部学生の3名は、チームの予算が少ないことから高価な試薬を買うことをためらい、「自分たちで新たな反応液を作れないか」と考えて研究を開始しました。高価な試薬を使わずとも、大腸菌から特別な方法で抽出した溶液「SLiCE」を使えば「相同組換え」ができるという報告に着目し、北畠真 医生物学研究所助教と共同で「SLiCE」の有効成分の特定に挑戦しました。研究の結果、2つの酵素が活性を担っていることがわかりました。これらの酵素のカクテルは高価な試薬の数千分の一のコストで作成することができ、市販のものと同等の性能を示したのです。この成果は世界中で行われるDNAクローニングのコストを大幅に削減させることにつながると期待されます。

 本研究成果は、2023年5月3日に、国際学術誌「Genes to Cells」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「遺伝子組換え実験には自分も学生の頃から苦労してきました。研究者になってからは便利なキットが販売されたので操作は楽になりましたが、今度はそれを買うための予算の確保に苦労することになりました。優秀で志の高い学生たちの取組みで今回のような成果が出たことは非常に嬉しいです。日本には優れた若者がたくさんいると勇気づけられました。余裕のある方はiGEM Kyotoの活動を支援してあげてほしいです。(https://igemkyotoofficial.github.io/)」(北畠真)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1111/gtc.13034

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/284569

【書誌情報】
Alexander Y. Liu, Hiroto Koga, Chihiro Goya, Makoto Kitabatake (2023). Quick and affordable DNA cloning by reconstitution of Seamless Ligation Cloning Extract using defined factors. Genes to Cells. 28(8), 553-562.

メディア掲載情報

京都新聞(6月28日 夕刊1面)に掲載されました。