マイクロ空間内に均一な原子層を形成させる新技術―狭窄空間内への新たな原子層堆積手法の開発―

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 久保拓也 工学研究科准教授、金尾英佑 薬学研究科助教、柳田剛 東京大学教授、細見拓郎 同助教、亀井龍真 同大学院生らによる研究グループは、きわめて狭いマイクロ空間に対して均一に原子層を堆積する新しい方法を開発しました。これまで、微細な構造表面に対して膜厚・膜組成を細やかに制御しながら空間均一的に金属酸化物を堆積させる手法として原子層堆積(ALD)法が広く用いられてきました。しかし、キャピラリーチューブのような狭い空間に対しては金属酸化物の前駆体を供給することが難しく、適用に課題がありました。

 本研究では、狭い空間の両端に大きな圧力差をつけることのできるALD装置を新たに開発することで、長さ1000mm、内径100μmというきわめて細長いキャピラリーチューブの内壁に酸化チタン層を均一に成膜することに成功しました。また、酸化チタンをコーティングしたキャピラリーマイクロチューブは、優れた熱的および化学的堅牢性を示し、さまざまな分子混合物を分離精製することが出来る流路(カラム)として適した性能を発揮しました。ALDが可能な形状の適用範囲を大幅に広げたという点で本成果は意義深く、今後さまざまな狭窄空間内の表面特性を自在に変調させるための新手法として発展することが期待されます。

 本研究成果は、2023年5月8日に、国際学術誌「ACS Applied Materials and Interfaces」に掲載されました。

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狭窄空間内への均一な原子層堆積手法
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書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1021/acsami.3c01443

【書誌情報】
Ryoma Kamei, Takuro Hosomi, Masaki Kanai, Eisuke Kanao, Jiangyang Liu, Tsunaki Takahashi, Wenjun Li, Wataru Tanaka, Kazuki Nagashima, Katsuya Nakano, Koji Otsuka, Takuya Kubo, Takeshi Yanagida (2023). Rational Strategy for Space-Confined Atomic Layer Deposition. ACS Applied Materials & Interfaces, 15(19), 23931-23937.