致死性遺伝性不整脈の患者由来iPS細胞モデル―カルモジュリン変異が引き起こす重症不整脈―

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 牧山武 医学研究科特定講師、高景山 同博士課程学生、山本雄大 同研究員(現:スタンフォード大学ポスドク)、小林琢也 順天堂大学助教、呉林なごみ 同客員准教授、村山尚 同先任准教授らの研究グループは、カルモジュリン変異が致死性不整脈を引き起こすメカニズムに関して、患者iPS細胞由来の心筋細胞モデルを用いて明らかにしました。カルモジュリンは普遍的に存在するカルシウム結合タンパク質であり、さまざまな生命機能に重要な役割を果たしています。近年、カルモジュリン遺伝子の異常により、重症な不整脈疾患が引き起こされることが報告されましたが、その疾患発症機序はまだ十分に解明されていません。本研究では、運動誘発性心室頻拍の症例から樹立したiPS細胞から分化させた心筋細胞の解析、組換えカルモジュリンタンパク質を用いた生化学的解析により、重症不整脈発症のメカニズムを明らかにしました。本研究はカルモジュリン変異によるカテコラミン誘発性多形性心室頻拍における初めての疾患iPS細胞モデルの報告となり、疾患発症機序の理解と新規治療法の開発(プレシジョン・メディシン)につながると期待されます。

 本研究成果は、2023年3月21日に、国際学術誌「Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology」にオンライン掲載されました。

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本研究の概要図
カルモジュリン関連カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)に関して、疾患iPS細胞モデルを用いて不整脈発症メカニズムを解明した。
変異型カルモジュリンが、リアノジン受容体へ優先的に結合し、筋小胞体から細胞質へのカルシウムリークを生じさせ、重症不整脈を引き起こす。(図左)
研究者のコメント

「患者由来iPS細胞より心筋細胞を作製し、重度の不整脈が観察された時、その結果に興奮するとともに何とか発症メカニズムを明らかにしたいと思いました。電気生理学的解析に加えて組換えカルモジュリンタンパク質を用いた生化学的解析を行い本疾患の発症メカニズムが解明できたのを嬉しく思います。本モデルを用いて、創薬等のさらなる研究を展開していきたいと思います。」(高景山)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1161/CIRCEP.122.011387

【書誌情報】
Jingshan Gao, Takeru Makiyama, Yuta Yamamoto, Takuya Kobayashi, Hisaaki Aoki, Thomas L. Maurissen, Yimin Wuriyanghai, Asami Kashiwa, Tomohiko Imamura, Takanori Aizawa, Hai Huang, Hirohiko Kohjitani, Misato Nishikawa, Kazuhisa Chonabayashi, Megumi Fukuyama, Hiromi Manabe, Kouichi Nakau, Tsutomu Wada, Koichi Kato, Futoshi Toyoda, Yoshinori Yoshida, Naomasa Makita, Knut Woltjen, Seiko Ohno, Nagomi Kurebayashi, Takashi Murayama, Takashi Sakurai, Minoru Horie, Takeshi Kimura (2023). Novel Calmodulin Variant p.E46K Associated With Severe Catecholaminergic Polymorphic Ventricular Tachycardia Produces Robust Arrhythmogenicity in Human Induced Pluripotent Stem Cell–Derived Cardiomyocytes. Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology, 16(3):e011387.