遺伝子・環境が同じメダカを頭の斑点で識別―均質な実験動物のバイオメトリクス―

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 森泉元 医学研究科博士後期課程学生、杉本直三 同教授、上野智弘 同助教の研究グループは、均質な環境下で飼育された近交系メダカにおいて、頭部の斑点を利用して個体を識別する手法を確立しました。

 メダカは近年のゲノム編集技術の進歩に伴い、人間で発症する病気を模した動物モデルとして利用されています。アルツハイマー病などのゆっくりと進行する病気の研究では、どのような症状が現れ、薬や運動がどのように効くかを、長い期間にわたって個々の動物で観測することが望まれます。しかし、動物実験では、遺伝子(生まれ)も飼育環境(育ち)も同じ動物が必要とされるため、遺伝子・環境が同じメダカを区別する方法は確立されていませんでした。本研究では、メダカの頭部に存在する黒い斑点に着目し、斑点のパターンの時間的な変化や個体ごとの違いを検証しました。その結果、4週間ごとにデジタルカメラで撮影・記録された頭部の斑点パターンからメダカを特定できることが分かりました。このシンプルな特定手法は、メダカを利用した医学・創薬研究へのバイオメトリクスとしての貢献が期待されます。

 本研究成果は、2023年1月12日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

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頭部の斑点を利用した個体識別と、可能となるメダカの長期的な解析

研究者のコメント

「我々の研究グループでは疾患モデルメダカの経時解析に取り組んできましたが、良い個体識別法が存在せず、それが大きな悩みのひとつでした。様々な手法を考え実際に試していく中で、本手法にたどり着き、成果として発表できたことを嬉しく思います。また、本手法が、メダカを利用した医学研究や創薬研究のさらなる質の向上に貢献することを期待します。」(森泉元)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-023-27386-w

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/278760

【書誌情報】
Hajime Morizumi, Naozo Sugimoto, Tomohiro Ueno (2023). Individual identification of inbred medaka based on characteristic melanophore spot patterns on the head. Scientific Reports, 13:659.

メディア掲載情報

産経新聞(4月1日夕刊 1面)に掲載されました。