がんゲノム医療のさらなる拡大へ向けた一歩―コンピュータ解析で意義不明変異のなかに治療標的となる新たな遺伝子変異を発見―

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 荒木望嗣 医学研究科特定准教授、奥野恭史 同教授、中奥敬史 国立がん研究センター主任研究員、河野隆志 同分野長、田畑潤哉 東京慈恵会医科大学医員、岡本愛光 同教授、吉野龍ノ介 筑波大学助教、宇井彩子 東北大学准教授、関嶋政和 東京工業大学准教授らからなる研究チームは、がんゲノムデータベースに登録される約7万種類の遺伝子変異に対するコンピュータ解析やそれに基づく細胞実験を行い、これまで薬剤の有効性が確認できておらず意義が不明とされていた変異のなかから既存薬剤のRET阻害薬による治療効果が見込まれる新たなRET遺伝子の変異を発見しました。RET遺伝子の変異は、甲状腺がんをはじめとして幅広いがんに見られますが、RET阻害薬の有効性を確認できているのは特定の変異を有する一部の患者さんで、意義が不明の変異を有する患者さんにおいての有効性はその多くが解明されていませんでした。

 がんゲノム医療の現場では、RET遺伝子に限らず、さまざまな遺伝子で意義の不明な遺伝子変異が頻繁に見つかります。本研究により意義の不明な遺伝子変異の中には、既存の抗がん剤の治療効果が見込まれる治療標的変異が含まれていることが示され、今後、コンピュータ解析によりこれらの変異の意義を推定していくことにより、患者さんの抗がん剤による治療機会が拡大することが期待されます。

 本研究成果は、2022年9月27日に、科学誌「Cancer Research」に掲載されました。

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図:コンピュータ解析による意義不明変異の意義付け
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-22-0834

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/276798

【書誌情報】
Junya Tabata, Takashi Nakaoku, Mitsugu Araki, Ryunosuke Yoshino, Shinji Kohsaka, Ayaka Otsuka, Masachika Ikegami, Ayako Ui, Shin-ichiro Kanno, Keiko Miyoshi, Shigeyuki Matsumoto, Yukari Sagae, Akira Yasui, Masakazu Sekijima, Hiroyuki Mano, Yasushi Okuno, Aikou Okamoto, Takashi Kohno (2022). Novel Calcium-Binding Ablating Mutations Induce Constitutive RET Activity and Drive Tumorigenesis. Cancer Research, 82(20), 3751-3762.