新たな冷却方法やエネルギー輸送の実現に期待~高効率なアンチストークス発光を示す半導体複合ナノ構造材料を発見~

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 金光義彦 化学研究所教授、梶野祐人 千葉大学特任研究員(現:九州大学学術研究員)、山田泰裕 同准教授、小島一信 大阪大学教授らの研究グループは、半導体のCs4PbBr6結晶内部に埋め込まれたCsPbBr3ナノ構造から高効率なアンチストークス発光を観測することに成功しました。高効率なアンチストークス発光は、光を照射することで半導体の温度を下げる「半導体光学冷却」の実現の道を拓くものであり、冷媒やコンプレッサーを使わない「無振動無冷媒」冷却の実現や、熱を光に変換して輸送するような新しいエネルギー利用も期待できます。

 本研究成果は、2022年4月14日に、国際学術誌「Physical Review Materials」に掲載されました。

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図 アンチストークス発光の原理。半導体に一定以上のエネルギーの光を照射すると、電子がエネルギーを吸収して高エネルギー状態(励起状態)になり、これが元の状態(基底状態)に戻るときに放出する光を発光と呼びます。光が吸収されるギリギリのエネルギーの光で半導体を励起すると、電子がフォノン(熱エネルギー)を吸収することで、励起光より高いエネルギーの発光(=アンチストークス発光)が生じることがあります。このためには、電子とフォノンの相互作用がある程度強いことが必要です。

 

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.6.L043001

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/269523

【書誌情報】
Yuto Kajino, Shuji Otake, Takumi Yamada, Kazunobu Kojima, Tomoya Nakamura, Atsushi Wakamiya, Yoshihiko Kanemitsu, and Yasuhiro Yamada (2022). Anti-Stokes photoluminescence from CsPbBr₃ nanostructures embedded in a Cs₄PbBr₆ crystal. Physical Review Materials, 6(4):L043001.

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