インドネシア映画に映される国民的課題を分析 -父親の権威、宗教と暴力、歴史認識を問い直す-

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 西芳実 東南アジア地域研究研究所准教授は、インドネシアでの地域研究などを経て、インドネシア映画を題材に、それらに映し出されるインドネシアの国民的課題について分析しました。

 インドネシアでは、1998年にスハルト大統領による開発独裁が終わって民主化が進められる中で、社会が抱える諸課題を克服して新生インドネシアを作ろうとしてきました。政治や経済に目が向けられがちですが、変化が大きな時代では、人々が、自分たちが置かれた状況をどのように認識し、それにどのように臨もうとしているかを捉えることが重要です。

 インドネシアでは、民主化によるメディアの自由化に伴って映画制作が活況を呈し、映画は社会の課題や人々の希望が映されるメディアになりました。本研究では、民主化後のインドネシアで、父親の権威、宗教と暴力、歴史認識といった国民的課題が映画にどのように映されてきたかを明らかにしました。

 インドネシアは、ASEAN諸国の中心的な存在であり、アジアにおける日本の重要なパートナーです。本研究は、インドネシアの人々の社会に対する夢と挑戦への理解を深めるとともに、同じような課題に直面している日本がそれらの課題にどう対応すればよいのかを考える手がかりになります。

 本研究成果は、2021年12月26日に、「夢見るインドネシア映画の挑戦」として出版されました。

インドネシアでは、学校では国語で国民の物語を学び、日常的には地方語や民族語でそれぞれの経験や思いを語り合う。映画は民族・地方や世代の違いを越えて人々を結ぶ国民的なメディアである。
図:インドネシアでは、学校では国語で国民の物語を学び、日常的には地方語や民族語でそれぞれの経験や思いを語り合う。映画は民族・地方や世代の違いを越えて人々を結ぶ国民的なメディアである。
研究者情報
書誌情報

西芳実 (2021). 夢みるインドネシア映画の挑戦. 英明企画編集.