陸にすむ多くの動物にとって、日本列島は分布を拡げる旅の「終着点」であると考えられてきましたが、コウモリの一種は大陸から日本列島へ渡り、多様化した後、再び大陸へ進出した可能性が初めて示唆されました。
池田悠吾 理学研究科博士課程学⽣と本川雅治 総合博物館教授は、日本列島と朝鮮半島、および中国東北部に生息するニホンキクガシラコウモリのミトコンドリアDNAにおける遺伝的変異を解析しました。本種は日本列島内には3つの系統グループが存在し、それらのうちで最も新しいグループには南九州と朝鮮半島、および中国東北部に分布するコウモリが含まれることを明らかにしました。これにより、本種は大陸から渡ってきた後に日本列島で多様化した後、氷河期の海水面低下に伴い今より狭かった対馬海峡を渡って大陸へと再進出したことが示唆されました。
本研究成果は、日本列島のような島が生物多様性を生み出し、大陸へ供給するメカニズムを解明する上で重要な知見を提供するものです。
本研究成果は、2021年12月3日に、国際学術誌「Ecology and Evolution」にオンライン掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1002/ece3.8414
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/267193
Yugo Ikeda, Masaharu Motokawa (2021). Phylogeography of the Japanese greater horseshoe bat Rhinolophus nippon (Mammalia: Chiroptera) in Northeast Asia: New insight into the monophyly of the Japanese populations. Ecology and Evolution, 11(24), 18181-18195.