国の診療報酬請求データベースを用いて特殊な網膜剥離の発症率を明らかに -NDBオンサイトリサーチセンター(京都)を活用した初の成果-

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 三宅正裕 医学研究科特定講師、木戸愛 同博士課程学生、辻川明孝 同教授、田村寛 国際高等教育院教授らの研究グループは、厚生労働大臣の許可のもと、本学に設置されたナショナルデータベース(NDB)のオンサイトリサーチセンターを利用してNDBの全データを解析することにより、日本人の中心性漿液性脈絡網膜症の発症率や性別・年齢による発症傾向を明らかにしました。

 近年、日々行われている実際の診療実態を反映したデータ(いわゆる、リアルワールドデータ)の大規模データベースを研究題材とした臨床研究が注目を集めています。診療報酬請求情報(レセプト)データは、このリアルワールドデータの代表的なものです。その中でも、NDBは厚生労働省が管理しているレセプトデータベースで、日本のほぼ全国民のレセプト情報が含まれています。こういった全国民規模のデータベースがある国は、台湾・韓国と日本のみで、世界的にも有数の貴重なレセプトデータベースであるといえます。NDBを研究に利用するためには厚生労働大臣の許可が必要です。その提供形式には、サンプリングデータ・集計表情報・特別抽出・オンサイトリサーチセンターの現在4種類の形式がありますが、その中で、NDBに含まれる全データを直接解析することができるのはオンサイトリサーチセンターだけです。現在、オンサイトリサーチセンターは東京大学、京都大学、厚生労働省内部にのみ設置されています。

 本研究は中心性漿液性脈絡網膜症の疫学研究として世界最大の報告で、NDBオンサイトリサーチセンター(京都)を活用した初の成果です。本研究グループは、今後もNDBをはじめとしたレセプトデータベースを用いて、中心性漿液性脈絡網膜症のみならず種々の眼科疾患の疫学や発症リスクを解明し、病態解明や新たな治療法の発展につなげていきたいと考えています。

 本研究成果は、2021年7月14日に、国際学術誌「British Journal of Ophthalmology」のオンライン版に掲載されました。

本研究の概要図
図:本研究の概要図
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1136/bjophthalmol-2021-319403

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/277457

【書誌情報】
Ai Kido, Masahiro Miyake, Hiroshi Tamura, Shusuke Hiragi, Takeshi Kimura, Shosuke Ohtera, Ayako Takahashi, Sotaro Ooto, Koji Kawakami, Tomohiro Kuroda, Akitaka Tsujikawa (2022). Incidence of central serous chorioretinopathy (2011–2018): a nationwide population-based cohort study of Japan. British Journal of Ophthalmology, 106(12), 1748-1753.