脂質受容体の新たな活性化機構を解明 -脂質がまっすぐ伸びて活性化-

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 萩原正敏 医学研究科教授、岩田想 同教授(兼・理化学研究所グループディレクター)、前田信太郎 同博士課程学生らの研究グループは井上飛鳥 東北大学准教授、南後恵理子 同教授(兼・理化学研究所チームリーダー)、平田邦生 理化学研究所専任技師らと共同でスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)という脂質を認識するS1P受容体S1PR3のS1Pと結合した状態での立体構造を、X線結晶構造解析によって解明しました。

 S1Pはその受容体を介して、免疫細胞の体内での輸送、血管透過性、血管の発生などを制御する生理活性を有する脂質です。そのため、S1P受容体は自己免疫疾患などの炎症性疾患に対する治療薬の標的となっています。しかしながら、S1Pがどのように受容体を活性化して細胞に情報を伝達しているかは明らかとなっていませんでした。本研究によりS1Pは受容体中で脂質鎖をまっすぐ伸ばすことで受容体を活性化することがわかりました。また、脂質鎖の長さによって細胞内に伝える情報が偏る機構の一端も明らかにしました。これらの情報により、S1P受容体を標的とした新薬の設計が加速されると期待されます。

 本研究成果は、2021年6月10日に、国際学術誌 「Science Advances 」に掲載されました。

本研究の概要図
図:本研究の概要図
研究者情報
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1126/sciadv.abf5325

【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/263316

Shintaro Maeda, Yuki Shiimura, Hidetsugu Asada, Kunio Hirata, Fangjia Luo, Eriko Nango, Nobuo Tanaka, Masayasu Toyomoto, Asuka Inoue, Junken Aoki, So Iwata, Masatoshi Hagiwara (2021). Endogenous agonist–bound S1PR3 structure reveals determinants of G protein–subtype bias. Science Advances, 7(24), eabf5325.