生体内タンパク質ライゲーションを用いた新規細胞表層ディスプレイ法の開発 -新しい手法によるタンパク質工学の進展-

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 植田充美 農学研究科教授(現・産官学連携本部特任教授)、青木航 同助教、梶原果穂 同修士課程学生(研究当時)、小池直暉 同博士研究員は、細胞内進化と統合可能な新規酵母表層提示技術を開発し、短時間・低コストでナノボディ(VHH抗体)などのタンパク質とその変異体を取得できる方法論の確立を試み成功しました。

 近年、タンパク質の機能向上を加速する手段として、生物の体内で遺伝子を多様化する細胞内進化(in vivo evolution)が着目されています。細胞内進化では、変異導入酵素が目的の遺伝子に変異を蓄積することで、生物を培養するだけで目的配列が継続的に多様化され、従来のin vitro法より短時間・低コストな手法になると期待されています。一方、細胞表層ディスプレイはフローサイトメーターを使用したスクリーニングが可能という点から、優れたライブラリープラットフォームです。中でも酵母は真核生物のシャペロンを使用したタンパク質フォールディングが可能であり、大腸菌などの原核生物を宿主とする場合と比較すると、より複雑なタンパク質の提示を行えるというメリットがあります。しかし、酵母表層ディスプレイにおいてはディスプレイするタンパク質と足場タンパク質を同一の遺伝子カセットでコードしており、足場タンパク質に変異が導入された場合はタンパク質のディスプレイが起こらなくなってしまうので、細胞内進化と組み合わせることが困難であるという問題点がありました。

 そこで本研究では、酵母表層ディスプレイと細胞内進化を統合に向けて、SpyTag/SpyCatcherシステムを用いた新規酵母表層ディスプレイ技術を開発しました。

 本研究成果は、2021年5月26日に、国際学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

本研究で発明したSpyTag/SpyCatcher表層
図:本研究で発明したSpyTag/SpyCatcher表層
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1038/s41598-021-90593-w

【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/263136

Kaho Kajiwara, Wataru Aoki, Naoki Koike, Mitsuyoshi Ueda (2021). Development of a yeast cell surface display method using the SpyTag/SpyCatcher system. Scientific Reports, 11, 11059.