大質量星の超新星エンジンをX線観測で解明 -ニュートリノ加熱による高エントロピー上昇流が爆発を後押し-

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 前田啓一 理学研究科准教授、佐藤寿紀 理化学研究所基礎科学特別研究員(現・立教大学助教)、長瀧重博 同主任研究員、梅田秀之 東京大学准教授、吉田敬 同研究員らの研究グループは、チャンドラ衛星によるX線観測から、超新星残骸「カシオペア座A」は「ニュートリノ加熱」が引き金となって爆発した重力崩壊型超新星の名残であるという観測的証拠を初めて掴みました。

 太陽質量の約10倍以上の大質量星は、その一生の最期に「重力崩壊型超新星爆発」と呼ばれる大爆発を起こします。この爆発メカニズムの解明は、宇宙物理学上の超難問といわれ、大規模な理論計算を用いても再現が困難でした。現在では、星が重力崩壊を起こすときに大量に放出されるニュートリノの一部のエネルギーが物質を加熱し、超新星爆発を引き起こすというシナリオが最も有力です。このメカニズムに関する最も重要な手がかりは、1987年に起きた超新星1987Aからのニュートリノの直接観測で得られました。しかし、このシナリオの本質であるニュートリノ加熱を裏付ける観測的証拠はありませんでした。

 今回、本研究グループは、超新星残骸カシオペア座A内にニュートリノ加熱時に立ち上る高エントロピーの上昇流の痕跡を発見し、観測的にこの大質量星の「超新星エンジン」ともいうべき仕組みを明らかにしました。また、私たちの生活に欠かせない金属であるチタンが、超新星爆発時の上昇流内で大量に合成されていることも初めて観測しました。

 本研究成果は、2021年4月22日に、国際学術誌「Nature」に掲載されました。

超新星内部での上昇流形成プロセス(左)と超新星残骸カシオペア座AのX線画像(右)
図:超新星内部での上昇流形成プロセス(左)と超新星残骸カシオペア座AのX線画像(右)
研究者情報
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1038/s41586-021-03391-9

Toshiki Sato, Keiichi Maeda, Shigehiro Nagataki, Takashi Yoshida, Brian Grefenstette, Brian J. Williams, Hideyuki Umeda, Masaomi Ono, John P. Hughes (2021). High-entropy ejecta plumes in Cassiopeia A from neutrino-driven convection. Nature, 592, 537-540.

メディア掲載情報

産経新聞(4月22日 26面)および日刊工業新聞(4月22日 29面)に掲載されました。