形を変えながら動く3次元物体の解析手法の提唱 -動くから形が変わるのか、形を変えることで動くのか-

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 Yusri dwi heryanto 医学研究科博士、山田亮 同教授らの研究グループは、変形しながら移動する3次元物体の、軌道と形とを経時的に計測し、形の変化と速度や軌道の変化との相互関係を解析するためのコンピュータソフトウェアを開発し発表しました。3次元物体の形はとらえどころがなく、形を定量的に捉えること自体も、困難な課題の一つですが、それについては、球面調和関数分解を用いた既存の方法を採用しました。他方、2つの三次元物体の形を比較することは、さらに難しい問題です。それは最適配置決定問題と呼ばれる問題です。

 よく似た形をした2つの物体の形を比較するときに、比較しやすいように向きを揃えることができれば、形の異同を定量することは簡単ですが、どのような配置にすることが、比較するために最適であるかを決めることが難しいからです。本研究グループは、この最適配置決定問題を解くのではなく、それを回避することで、形・変形・運動の統合解析手法の作成に成功しました。空間を移動している物体には進行方向、進行方向の曲がり方向、よじれ方向の3方向があります。この3方向を物体の形を評価する座標系として採用することにより、物体の運動軌道に特有の配置を選ぶことができます。このように物体の軌道情報と直結した座標系を物体のその時々の形評価用の座標系とすることで、最適配置決定問題を解くことなく、形の比較をするための座標系の取り方に根拠を与えました。

 この当方解析手法により、物体が周囲環境から力を受けて、移動・変形する様子や、逆に、物体が自発的に動こうとしているときに、周囲環境との相互作用で変形・方向転換する様子を統計解析・シミュレーション解析・モデルフィッティングすることなどが可能になりました。本研究グループは細胞の移動と変形のデータにこの方法を適用しましたが、世の中には、移動しながら変形する現象は多数あり、ライフサイエンス分野では、細胞内小器官・細胞・組織・臓器などへの応用が可能であり、物理学分野にも多くの応用例が考えられます。

 本研究成果は、2021年3月26日に、国際学術誌「Open Biology」のオンライン版に掲載されました。

本研究のイメージ図
図:本研究のイメージ図
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1242/bio.058512

【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/262475

Yusri Dwi Heryanto, Chin-Yi Cheng, Yutaka Uchida, Kazushi Mimura, Masaru Ishii, Ryo Yamada (2021). Integrated analysis of cell shape and movement in moving frame. Biology Open, 10.