膜タンパク質が「はさみ分子」によって切断される部位を大規模に解明 -細胞間コミュニケーションの制御機構解明に向けて-

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 石濱泰 薬学研究科教授、津曲和哉 同博士課程学生(研究当時、現・慶應義塾大学特任助教)らの研究グループは、異なる組織に由来する10種のヒト由来細胞株について、シェディングによって遊離したタンパク質を液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)によって解析し、大規模にその切断部位を同定しました。

 細胞膜に結合しているタンパク質(=膜タンパク質)は、タンパク質の「はさみ」であるプロテアーゼによって切断されて遊離することで、離れた細胞とのコミュニケーションを行います。この現象はエクトドメインシェディング(シェディング)と呼ばれ、様々な生命現象に関連します。これまでに、様々な膜タンパク質がシェディングを受けることが知られていました。切断される部位によって膜タンパク質は異なる機能を獲得し得るため、その位置的情報は重要です。しかし、ほとんどのシェディング基質について、詳細な切断部位の情報が不明でした。

 本研究で得られた切断部位情報は、今まで報告されていた情報を遥かに上回る過去最大のものであり、細胞間シグナル伝達の解明やシェディングを標的とした創薬開発に有用なデータソースとなることが期待されます。

 本研究成果は、2021年3月2日に、国際学術誌「iScience」に掲載されました。

本研究の概要図
図:本研究の概要図
研究者情報
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.isci.2021.102259

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/262426

Kazuya Tsumagari, Chih-Hsiang Chang, Yasushi Ishihama (2021). Exploring the landscape of ectodomain shedding by quantitative protein terminomics. iScience, 24(4), 102259.