遺伝性再生不良性貧血症「ADH5/ALDH2欠損症」を解析し治療薬を同定 -疾患iPS細胞モデルの開発と応用-

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 高田穣 生命科学研究科教授、牟安峰 同教務補佐員らの研究グループは、2020年11月、いままで見逃されていた新たな遺伝性再生不良性貧血症である「ADH5/ALDH2欠損症」を発見し、国際学術誌に発表しました。さらに、今回、患者の細胞等を用いて、iPS細胞をはじめとしたこの疾患のモデル細胞を作成し、病態を解析し、さらに治療薬の候補となるALDH2活性化剤の効果を確認しました。

 ALDH2は飲酒時にアルコールからできるアセトアルデヒドを分解する酵素であり、その遺伝子は変異によってお酒が飲めない体質となる有名なものです。ALDH2の変異自体は日本人の〜50%が持っています。ADH5/ALDH2欠損症の患者たちは、ALDH2に加えてホルムアルデヒド(=ホルマリン)分解酵素のADH5が変異して、体内のホルマリン分解ができなくなり、そのために再生不良性貧血になります。本研究によって、ALDH2も実はホルマリンを分解する重要なバックアップ分子であることが確認されました。作成した患者モデル細胞を人為的に造血細胞に変化させると(分化誘導)、DNA損傷を蓄積して増殖を停止することから、ホルムアルデヒドが作られるのは造血分化プロセス自体であることが判明しました。また、ALDH2活性化剤を添加すると、モデル細胞がより効率よく血球系へ増殖分化することがわかり、今後の治療薬開発に道筋をつけることができました。

 本研究成果は、2021年1月12日に、国際学術誌「Blood」のオンライン版に掲載されました。

本研究の概要図
図:本研究の概要図
研究者情報
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1182/blood.2020009111

Anfeng Mu, Asuka Hira, Akira Niwa, Mitsujiro Osawa, Kenichi Yoshida, Minako Mori, Yusuke Okamoto, Kazuko Inoue, Keita Kondo, Masato T Kanemaki, Tomonari Matsuda, Etsuro Ito, Seiji Kojima, Tatsutoshi Nakahata, Seishi Ogawa, Keigo Tanaka, Keitaro Matsuo, Megumu K Saito, Minoru Takata (2021). Analysis of disease model iPSCs derived from patients with a novel Fanconi anemia-like IBMFS ADH5/ALDH2 deficiency. Blood, 137(15), 2021-2032.

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