中性子寿命の謎の解明に向けた新実験が始動 -第3の手法により中性子寿命問題の解明に挑む-

ターゲット
公開日

 岩下芳久 化学研究所准教授、北原龍之介 同博士課程学生、三島賢二 高エネルギー加速器研究機構特別准教授、猪野隆 同講師、市川豪 同研究員らの研究グループは、名古屋大学、東京大学、九州大学、大阪電気通信大学、筑波大学、大阪大学と共同で、既存の手法とは異なる新しい手法で中性子寿命を測定する装置を開発し、最初の実験結果を得ました。

 原子核を形作る粒子のひとつである中性子の崩壊は、宇宙の元素合成のメカニズムや素粒子物理学に深く関連しています。この中性子の寿命は、大きくビーム法(中性子ビームが検出器の中で崩壊した陽子数を数える)とボトル法(ボトル中で崩壊せず残った中性子を測定する)の2種類の方法で測定されてきましたが、両者の結果には約9秒の差がありました。

 このように実験手法によって中性子の寿命に差が出る謎を解明するために、本研究グループは陽子を検出する従来のビーム法に対して、電子を検出する方法を考案しました。本実験では、大強度パルス中性子ビームを特殊な制御装置を用いて40cm程度の長さに整形した後、長さ1mのガス検出器に導入し、検出器内部で生じる中性子崩壊による電子線を検出します。中性子崩壊による電子線を検出することは、陽子を検出する場合よりも難しい実験ですが、一連の中性子が全て検出器内部に存在する間だけ信号を取得するという方法によって、最初の実験結果を得ました。

 今後は、本成果を元に中性子の崩壊寿命の測定精度を向上させることで、宇宙の進化の謎にさらに迫ることが期待されます。

 本研究成果は、2021年1月8日に、国際学術誌「Progress of Theoretical and Experimental Physics」のオンライン版に掲載されました。

メイン画像
図:中性子寿命の測定値  ボトル法とビーム法の過去の測定値と今回得られた測定値
研究者情報
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1093/ptep/ptaa169

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/260949

K Hirota, G Ichikawa, S Ieki, T Ino, Y Iwashita, M Kitaguchi, R Kitahara, J Koga, K Mishima, T Mogi, K Morikawa, A Morishita, N Nagakura, H Oide, H Okabe, H Otono, Y Seki, D Sekiba, T Shima, H M Shimizu, N Sumi, H Sumino, T Tomita, H Uehara, T Yamada, S Yamashita, K Yano, M Yokohashi, T Yoshioka (2020). Neutron lifetime measurement with pulsed cold neutrons. Progress of Theoretical and Experimental Physics.

メディア掲載情報

日刊工業新聞(1月14日 26面)に掲載されました。

関連部局