脂溶性化合物を細胞外へ絞り出す多剤排出ポンプの機構を解明

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 植田和光 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)特定教授、小段篤史 同特定助教らの研究グループは、細胞の多剤排出ポンプであるMDR1(別名ABCB1)が、様々な構造の脂溶性有害物をどのような機構で認識し、細胞外へ排出するかを明らかにしました。

 本研究グループの植田教授らが35年前に見出したABCB1遺伝子は、細胞膜に存在する膜タンパク質をコードしており、我々の健康の維持に関わります。現在では、数え切れないほど確認されている真核生物のABCタンパク質の中で、最初に見つかりました。ABCB1は、様々な構造の脂溶性化合物を細胞外へ排出する働きを持ち、天然に存在する有害なアルカロイドなどが体内に取り込まれるのを防ぐとともに、脳など、重要な組織に侵入することを防ぐことで、我々の健康を守っています。

 一般的に、酵素は、特定の化合物を認識することにより、酵素の構造に変化が起こり、反応が始まります。ABCB1の場合、様々な構造の脂溶性化合物を認識し排出することから、その機構は、他の一般的な酵素とは大きく異なっていることが予想されていましたが、これまで謎でした。

 そこで、本研究グループは、温泉に住む単細胞の真核生物がもつABCB1とよく似た膜タンパク質の輸送前と輸送後の詳細な構造を明らかにし、それらを比較することによって、ABCB1輸送機構を明らかにしました。

 本研究成果は、2020年12月4日に、国際学術誌「FEBS Letters」のオンライン版に掲載されました。

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図:本研究の概要図
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1002/1873-3468.14018

【書誌情報】 Atsushi Kodan, Ryota Futamata, Yasuhisa Kimura, Noriyuki Kioka, Toru Nakatsu, Hiroaki Kato, Kazumitsu Ueda (2020). ABCB1/MDR1/P‐gp employs an ATP‐dependent twist‐and‐squeeze mechanism to export hydrophobic drugs. FEBS Letters.