RNA構造のライブラリ化を通じてRNA 構造ごとにおけるRNA-タンパク質相互作用を大規模に解析するシステム「FOREST」の開発 -RNAを標的とする創薬に道-

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 齊藤博英 iPS細胞研究所教授、小松リチャード馨 同博士課程学生(xFOREST Therapeutics 代表取締役CTO)、樫田俊一 xFOREST Therapeutics代表取締役社長CEOらの研究グループは、数千-数万種類のRNA構造が行うRNA-タンパク質相互作用を1度に大規模に解析可能なシステム、FOREST(Folded RNA Element Profiling with Structure Library) を開発しました。

 FORESTでは通常の実験で使用するRNA1種類の代わりに、多様な生物種、細胞種、ウイルスゲノム等から抽出したRNAのモチーフ群であるRNA構造ライブラリを実験に使用します。ひいては、RNAを標的として結合するタンパク質が、RNA構造ライブラリ中のどのようなRNA構造にどの程度結合するのかという情報を一度の実験で大量に取得することができます。

 本研究では、実証実験として、複数のタンパク質を用いてFORESTの実用性の証明と、新しい相互作用の発見を試みました。結果として、RNA構造ライブラリとタンパク質の相互作用を定量なスコアによるランクとして描出できることを確認し、機能をもつRNA構造の発見に至りました。さらに、FORESTは、従来法では解析が難しかったRG4構造の大規模定量に成功しました。そして、複数のRG4結合タンパク質に対するRNA結合強度の定量化が可能になったため、新しくRG4結合タンパク質の結合特性を明らかにできました。応用例として相互作用データをもとにヒトマイクロRNA前駆体からRG4構造を新たに見出すことに成功しました。FORESTは概して、RNA構造の相互作用を大規模に解析する幅広いプラットホームとなり、今後RNAに関連する基礎研究や創薬開発など、さまざまな領域で活用が期待されます。

 本研究成果は、2020年12月8日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

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図:FORESTの概要
研究者情報
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-020-19699-5

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/259471

Kaoru R. Komatsu, Toshiki Taya, Sora Matsumoto, Emi Miyashita, Shunnichi Kashida & Hirohide Saito (2020). RNA structure-wide discovery of functional interactions with multiplexed RNA motif library. Nature Communications, 11:6275.

メディア掲載情報

日刊工業新聞(12月10日 21面)に掲載されました。

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