宇宙最強の磁石星「マグネター」に新天体を発見 -国際宇宙ステーションのX線望遠鏡NICERが活躍-

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フー・チンピン 理学研究科・日本学術振興会外国人特別研究員(理化学研究所客員研究員)、榎戸輝揚 白眉センター特定准教授(現・理化学研究所チームリーダー)、トルガ・ガーバー イスタンブール大学教授、ベステ・ベギカースラン 同学部生、坂本貴紀 青山学院大学教授らの研究グループは、2020年3月に報告された新天体「Swift J1818.0-1607」が、これまでに 20天体ほどしか見つかっていない中性子星の一種、宇宙で最も強い磁場を持つ「マグネター」であることを突き止めました。

今回、本研究グループは、ミリ秒の継続時間を持つX線のバースト現象で見つかった新天体 Swift J1818.0-1607 を、国際宇宙ステーションに搭載されたX線望遠鏡NICERを用いて追跡観測を行いました。その結果、自転周期(1.36 秒)とその変化率の測定にいち早く成功し、星表面の磁場の強さが270億(2.7×1010)テスラにも達していることから、この天体が宇宙で最強の磁石星といわれている特異な「マグネター」であると突き止めました。その後の50日間近くのX線のモニタリング観測では、中性子星の自転周期が急激に変化する「グリッチ」という現象を2回、検出することにも成功しました。

本研究成果は、恒星が超新星爆発を起こした後に残される高密度天体である中性子星の進化と多様性、磁気活動を理解する鍵になると期待できます。

本研究成果は、2020年10月7日に、国際学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載されます。

図:宇宙最強の磁石星「マグネター」と磁力線の想像図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.3847/1538-4357/abb3c9

Chin-Ping Hu, Beste Begiçarslan, Tolga Güver, Teruaki Enoto, George Younes, Takanori Sakamoto, Paul S. Ray, Tod E. Strohmayer, Sebastien Guillot, Zaven Arzoumanian (2020). NICER Observation of the Temporal and Spectral Evolution of Swift J1818.0−1607: A Missing Link between Magnetars and Rotation-powered Pulsars. The Astrophysical Journal, 902(1):1.