筋ジストロフィーモデルマウスにおけるヒトiPS細胞由来骨格筋幹細胞の移植効果を確認

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趙明明 iPS細胞研究所研究員、櫻井英俊 同准教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞から筋再生能のある骨格筋幹細胞を誘導する方法を確立しました。また、この細胞を難病「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」のモデルマウスに移植したところ、筋張力の改善効果があることがわかりました。

DMDは、筋肉にあるジストロフィンというタンパク質が欠損することによって発症する進行性の重篤な筋疾患で、根本的な治療法は開発されていません。

本研究グループは、胎児の発生過程をモニターすることで、ヒトiPS細胞から効率的に筋肉のもととなる骨格筋前駆細胞を効率よく得られる方法を開発しました。そして、DMDを再現したモデルマウスにこの骨格筋前駆細胞を約30万個注射したところ、1匹あたり100本以上のジストロフィン陽性筋線維が再生されるのが確認されました。また、運動機能を評価するために、DMDモデルマウスの右ふくらはぎの筋肉に骨格筋前駆細胞を移植したところ、筋力の改善効果が示されました。

本研究により、将来の細胞移植療法の実現に貢献できると期待されます。

本研究成果は、2020年7月3日に、国際学術誌「Stem Cell Reports」に掲載されました。

図:細胞移植後のDMDモデルマウスの筋組織

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2020.06.004

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/252790

Mingming Zhao, Atsutoshi Tazumi, Satoru Takayama, Nana Takenaka-Ninagawa, Minas Nalbandian, Miki Nagai, Yumi Nakamura, Masanori Nakasa, Akira Watanabe, Makoto Ikeya, Akitsu Hotta, Yuta Ito, Takahiko Sato, Hidetoshi Sakurai (2020). Induced Fetal Human Muscle Stem Cells with High Therapeutic Potential in a Mouse Muscular Dystrophy Model. Stem cell report, 15(1), 80-94.

  • 朝日新聞(7月3日 26面)、京都新聞 (7月3日 25面)、 産経新聞 (7月3日 3面)、日刊工業新聞(7月3日 26面)、毎日新聞(7月3日 21面)および読売新聞(7月3日夕刊 8面)に掲載されました。