新規単一光子源「六方晶窒化ホウ素」からの、光子の射出方向を解明 -室温動作高効率単一光子源の実現にむけて-

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髙島秀聡 工学研究科助教、丸谷浩永 同修士課程学生(研究当時)、嶋崎幸之介 同修士課程学生、田嶌俊之 同特定研究員、竹内繁樹 同教授、石原奎太 工学部学生(研究当時)らの研究グループは、シドニー工科大学、ハノーファー大学らと共同で、特殊な偏光を持つレーザービームを用いて、「六方晶窒化ホウ素(hBN)」から発生した光子の射出方向を明らかにすることに成功しました。

超高速演算が可能な光量子コンピュータや盗聴不可能な暗号通信である量子暗号通信などの実現には、光子をひとつひとつ発生させる単一光子源の開発が重要です。最近、単色性に優れた光子を、室温で安定に発生する新たな光源として、窒素とホウ素の層状物質である「六方晶窒化ホウ素(hBN)」が注目されています。このhBNから、どのような方向に光子が射出されるのかは、高効率な単一光子源の実現に非常に重要ですが、これまで明らかにされていませんでした。

今回の成果をもとに、hBNの方向を最適化し光ファイバと一体化させると、室温動作可能な、光ファイバから光子が発生する高効率単一光子源を実現できます。それにより、光量子コンピュータや量子暗号通信の研究の飛躍的な発展が期待できます。

本研究成果は、2020年7月16日に、国際学術誌「ACS Photonics」のオンライン版に掲載されました。

図:(a)六方晶窒化ホウ素から発生した光子の方向推定のイメージ図。(b)放射状に偏光するビームで励起した場合の蛍光イメージ。(c)円周方向に偏光するビームで励起した場合の蛍光イメージ。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1021/acsphotonics.0c00405

Hideaki Takashima, Hironaga Maruya, Keita Ishihara, Toshiyuki Tashima, Konosuke Shimazaki, Andreas W. Schell, Toan Trong Tran, Igor Aharonovich, and Shigeki Takeuchi (2020). Determination of the Dipole Orientation of Single Defects in Hexagonal Boron Nitride. ACS Photonics, 7(8), 2056-2063.