植物多糖類を感知して接近する微生物の仕組みの一端を解明 -果皮廃棄物の有効活用へ期待-

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小西 英仁 農学研究科 修士課程学生(研究当時)、橋本渉 同教授らの研究グループは、ミカンやリンゴの皮などに多く含まれる植物細胞壁成分である多糖ペクチンを感知し、接近する微生物の仕組みの一端を明らかにしました。

ペクチンは植物細胞壁の構成成分である酸性多糖であり、ジャムやゼリーなどの食品増粘剤としても利用されています。アルギン酸は、ペクチン同様、植物の一種である褐藻類によって生産される酸性多糖です。本研究グループは、 Sphingomonas 属細菌A1株が遊泳能力を発揮して、栄養素であるペクチンとアルギン酸に接近することを見出していました。本研究では、このA1株の変異株(A1-M5株)が、ペクチンにのみ接近しないことを発見し、A1-M5株にペクチンに接近する性質を付与する遺伝子 sph1118 を明らかにしました。

さらに、 sph1118 遺伝子の産物であるタンパク質SPH1118の機能を解析したところ、SPH1118がペクチンを感知(認識結合)し、ペクチンに接近するための分子機構を働かせると同時に、ペクチンを栄養素として取り込むというメカニズムを持つことが明らかになりました。

本研究では、このように微生物が生存のために優れたセンシング機能を持つことを解明しました。ペクチンは果物の果皮などにも多く含まれるものの、その大部分は廃棄されています。本研究成果は、果皮廃棄物の有効活用(バイオ燃料生産など)に繫がることが期待されます。

本研究成果は、2020年3月4日に、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-020-60274-1

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245908

Hidenori Konishi, Mamoru Hio, Masahiro Kobayashi, Ryuichi Takase & Wataru Hashimoto (2020). Bacterial chemotaxis towards polysaccharide pectin by pectin-binding protein. Scientific Reports, 10:3977.

  • 日刊工業新聞(3月5日 23面)および読売新聞(3月10日 24面)に掲載されました。