大規模な気候シミュレーションデータを効率的に探索・取得するシステム(SEAL)を開発 -都道府県単位の将来予測も簡単表示、温暖化適応策検討にも貢献-

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小山田耕二 学術情報メディアセンター教授、中川友進 海洋研究開発機構特任技術副主幹らの研究グループは、数ペタバイトの大規模アンサンブル気候データから高速かつ効率的に必要な情報を抽出する技術を開発しました。

「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)」の解析は、気候変動予測やそれに伴う不確実性を定量評価するためにとても重要です。しかし、d4PDFのデータ量は約3ペタバイトと膨大です。従来のシステムでは情報の探索・取得には長時間を要し、また大容量の記録装置を備える必要があるなど高いハードルがありました。

そこで本研究では、シミュレーション後に得られる降水量や気温といった物理量を都道府県単位の空間情報にまとめ、時間的に圧縮し、必要なデータを効率的に探索・取得する技術を開発しました。この技術を実装したシステム「SI-CAT気候実験データベースシステム(System for Efficient content-based retrieval to Analyze Large volume climate data:SEAL)」は、文部科学省の事業で開発されているデータ統合・解析システム(DIAS)にて公開されました。

SEALの使用によって、従来のシステムと比べて、ユーザーがダウンロードするデータの容量は0.5%未満に、また必要なデータを見付けるまでの総時間は1%未満にまで減ることとなるため、今後は過去の顕著な気象イベントに対する要因分析、将来変化予測の不確実性の理解、影響評価などの研究が飛躍的に進むものと期待されるほか、ユーザーフレンドリーなインターフェースによって、研究者のみならず、各省庁、自治体、産業界等においても幅広く利用されるものと期待されます。

本研究成果は、2020年 2月26日に、 国際学術雑誌「Progress in Earth and Planetary Science」に掲載されました。

図:SEALの予想される利点の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1186/s40645-019-0315-9

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245880

Yujin Nakagawa, Yosuke Onoue, Shitnaro Kawahara, Fumiaki Araki, Koji Koyamada, Daisuke Matsuoka, Yoichi Ishikawa, Mikiko Fujita, Shiori Sugimoto, Yasuko Okada, Sho Kawazoe, Shingo Watanabe, Masayoshi Ishii, Ryo Mizuta, Akihiko Murata & Hiroaki Kawase (2020). Development of a system for efficient content-based retrieval to analyze large volumes of climate data. Progress in Earth and Planetary Science, 7:9.