パーキンソン病前駆期の動物モデルを作製 -発症予防や進行抑制に向けた治療法開発の貢献に期待-

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生野真嗣 医学研究科特定助教、山門穂高 同特定准教授、田口智之 同博士課程学生、上村麻衣子 同特定研究員、高橋良輔 同教授らの研究グループは、筑波大学、順天堂大学、京都府立医科大学と共同で、パーキンソン病(PD)前駆期のモデル動物の作製に成功しました。

PDはドパミン神経の変性をきたす進行性の難病の一つであり、日本では15~20万人の患者が存在しています。PDの治療については、ドパミンを補充するなどの対症療法は存在しますが、発症を予防したり進行を抑えることができる根本的な治療法はありません。PDは診断の時点でドパミン神経細胞が5割前後に減少しているため、これらの治療法の開発には発症前(前駆期)に病気を診断し治療を開始する必要性が唱えられているとともに、この前駆状態を忠実に再現した動物モデルの開発が待ち望まれていました。

本研究においてPDの原因であり異常に蓄積しているタンパク質(αシヌクレイン)を、その本来の発現部位で増加させた遺伝子改変マウスを作製したところ、嗅覚の低下や睡眠異常(レム睡眠行動障害)などのPDの前駆症状に引き続き、ドパミン神経細胞の減少を認めました。本マウスは、PDの発症予防や進行抑制を目的とした治療薬の開発のための動物モデルとして有用であり、また創薬におけるPD発症前あるいは超早期PDに対する治療の標的分子の発見にも貢献が期待されます。

本研究成果は、2019年12月10日に、国際学術誌「Brain」のオンライン版に掲載されました。

図:パーキンソン病の発症前駆期を再現するマウスモデルの作製

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1093/brain/awz380

Tomoyuki Taguchi, Masashi Ikuno, Mari Hondo, Laxmi Kumar Parajuli, Katsutoshi Taguchi, Jun Ueda, Masanori Sawamura, Shinya Okuda, Etsuro Nakanishi, Junko Hara, Norihito Uemura, Yusuke Hatanaka, Takashi Ayaki, Shuichi Matsuzawa, Masaki Tanaka, Omar M A El-Agnaf, Masato Koike, Masashi Yanagisawa, Maiko T Uemura, Hodaka Yamakado, Ryosuke Takahashi (2020). α-Synuclein BAC transgenic mice exhibited RBD-like behaviour and hyposmia: a prodromal Parkinson’s disease model. Oxford University Press (OUP), 143(1), 249-265.