天然キラル溶媒を不斉源とする触媒的不斉合成を開発 -高分子らせん骨格による高効率不斉転写・不斉増幅の実現-

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杉野目道紀 工学研究科 教授、長田裕也 同助教、竹田龍平 同博士課程学生(研究当時)らの研究グループは、天然から安価かつ大量に得られるキラル溶媒を唯一の不斉源として用い、触媒的不斉合成を行う新たな手法を開発しました。

本研究成果によって、オレンジの皮から得られる「( R )-リモネン」を反応溶媒として用いることで高分子(ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル))に一方向巻きらせん構造を誘起させ、その高分子を触媒として利用することで高選択的に光学活性化合物が得られることを明らかにしました。さらに、低光学純度のリモネンを用いた場合でも、高分子の不斉増幅現象に基づいて高い不斉選択性が維持されることを見いだしました。

本研究成果は、医薬品や農薬の高効率生産のほか、コピー防止印刷やバイオ研究用試薬などの効率的な開発に応用されることが期待されるとともに、安価な生物由来資源を有効に活用する新たな指針を示すものとして期待されます。

本研究成果は、2019年7月3日に、国際学術誌「ACS Central Science」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1021/acscentsci.9b00330

Yuuya Nagata, Ryohei Takeda and Michinori Suginome (2019). Asymmetric Catalysis in Chiral Solvents: Chirality Transfer with Amplification of Homochirality through a Helical Macromolecular Scaffold. ACS Central Science, 5(7), 1235-1240.

  • 日刊工業新聞(7月5日 31面)に掲載されました。