B型肝炎ウイルス抑制物質の作用機序解明 -新規抗B型肝炎治療薬の開発へ期待-

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掛谷秀昭 薬学研究科 教授、古谷裕 理化学研究所 上級研究員、小嶋聡一 同ユニットリーダーらの研究グループは、経口投与が可能でインターフェロン様活性を持つ低分子化合物CDM-3008(RO4948191)が、B型肝炎ウイルス(HBV)のcccDNA(完全閉塞本鎖)抑制効果などにより抗B型肝炎ウイルス活性を示すことを明らかにしました。

インターフェロン製剤は、HBVの鋳型となるcccDNAを分解できるため、B型肝炎の完治に向けて欠かせない注射剤です。しかし、発熱・倦怠などの副作用を伴うなどの問題があります。

本研究では、CDM(cccDNA modulator)-3008の抗HBV活性を解析しました。まず初代培養ヒト肝細胞を用いて、CDM-3008が抗HBV活性を有すること、HBVの複製を阻害する核酸アナログ製剤と相加的に抗HBV効果を示すことを明らかにしました。また、遺伝子解析の結果、CDM-3008がインターフェロンαと同様に抗HBV活性を発揮することが示唆され、CDM-3008特異的にHBVの増殖を抑える遺伝子が発現していることが分かりました。

したがって、CDM-3008は、インターフェロンの副作用を抑えつつ、同様の抗HBV効果を発揮する化合物として、新規治療薬開発への応用が期待されます。

本研究成果は、2019年6月13日に、国際学術誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究で明らかになったB型肝炎ウイルス抑制物質の作用機序

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1371/journal.pone.0216139

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/241748

Yutaka Furutani, Mariko Toguchi, Yumi Shiozaki-Sato, Xian-Yang Qin, Etsuko Ebisui, Shoko Higuchi, Masayuki Sudoh, Harukazu Suzuki, Nobuaki Takahashi, Koichi Watashi, Takaji Wakita, Hideaki Kakeya, Soichi Kojima (2019). An interferon-like small chemical compound CDM-3008 suppresses hepatitis B virus through induction of interferon-stimulated genes. PLOS ONE, 14(6):e0216139.

  • 毎日新聞(6月29日 23面)に掲載されました。