鉄鋼材料の高温加工熱処理プロセスの直接解析に成功 -その場中性子回折が拓く新たな加工熱処理プロセス-

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柴田曉伸 工学研究科准教授(兼・構造材料元素戦略研究拠点(ESISM)学内兼任教員)、辻伸泰 同教授(兼・同主任研究者)らの研究グループは、韓国・嶺南大学、 米国・コロラド鉱山大学、 日本原子力研究開発機構と共同で、「その場中性子回折」によって鉄鋼材料の高温加工熱処理プロセスの直接解析に成功しました。

500℃~1000℃のような高温での加工と熱処理を組み合わせた「加工熱処理」は、1000年以上前の刀鍛冶から現在の自動車用鋼板や建築材などの鉄鋼材料製造にも引続き適用されている製造プロセスです。しかし、高温度域での加工熱処理中にどのようにミクロ組織が形成されるかを直接観察することは困難であるため、現行の加工熱処理は依然として経験的な側面に大きく依存しているのが現状です。

本研究は、加工熱処理において近年注目されている「動的フェライト変態」という現象を研究対象にし、実際の鉄鋼材料製造プロセスを模擬した加工熱処理におけるミクロ組織の形成過程を、大強度陽子加速器施設・物質生命科学実験施設(J-PARC・MLF)にてその場中性子回折実験によって調べ、動的フェライト変態機構や動的フェライト変態による超微細粒ミクロ組織の形成過程を明らかにしました。

本研究成果は、今後の鉄鋼材料製造における加工熱処理プロセスを、理論的な観点から大きく飛躍させる可能性を持っており、鉄鋼産業などの産業界に大きな波及効果を及ぼすことが期待されます。

本研究成果は、2019年2月16日に、国際学術誌「Scripta Materialia」のオンライン版に掲載されました。

図:(上) 本研究で使⽤したその場中性⼦回折実験⽤⾼温加⼯熱処理シミュレータ (J-PARC MLF)。(下)加⼯熱処理中の中性⼦回折プロファイル

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.scriptamat.2019.02.017

Akinobu Shibata, Yasunari Takeda, Nokeun Park, Lijia Zhao, Stefanus Harjo, Takuro Kawasaki, Wu Gong, Nobuhiro Tsuji (2019). Nature of dynamic ferrite transformation revealed by in-situ neutron diffraction analysis during thermomechanical processing. Scripta Materialia, 165, 44-49.