脳神経による人間の歩行と歩行の制御様式を数理モデルで解明 -歩くと走るはどの程度違うのか-

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青井伸也 工学研究科講師、Yury Ivanenko IRCCSサンタルチア財団博士らの研究グループは、東京大学、電気通信大学と共同で、人が歩き、走るための脳神経の制御様式を、脳神経・筋・骨格系の数理モデルを用いた研究により、数理的に明らかにしました。

人の身体には多数の筋肉や関節があり、脳神経がこの複雑な構造を上手く制御することで、歩いたり、走ったり、様々な運動を可能にしています。その際、脳神経は多数の筋肉をそれぞれ個別に制御するのではなく、運動に応じた筋の組合せと活動パターンを複数用意しておき、それらを介して制御することで、制御の構造をシンプルにし、制御の負荷を減らしているという「筋シナジー」と呼ばれる考え方が提唱されています。

本研究グループは、この筋シナジーに基づく脳神経の制御モデルと筋・骨格モデルを統合した動力学シミュレーションを行いました。その結果、共通の制御様式を用い、少数のパラメータを変えるだけで歩くことも走ることもできることを数理的に明らかにしました。

本研究成果は、未だ議論のある筋シナジーの存在に重要な示唆を与え、運動能力やコーチングの向上などスポーツ科学の発展や、外骨格ロボットの制御など運動支援技術の発展に寄与することが期待されます。

本研究成果は、2019年1月23日に、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-018-37460-3

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/236094

Shinya Aoi, Tomohiro Ohashi, Ryoko Bamba, Soichiro Fujiki, Daiki Tamura, Tetsuro Funato, Kei Senda, Yury Ivanenko & Kazuo Tsuchiya (2019). Neuromusculoskeletal model that walks and runs across a speed range with a few motor control parameter changes based on the muscle synergy hypothesis. Scientific Reports, 9:369.