細胞内流動が標的結合型プローブの 誤った分布勾配を生み出すことを解明 -定量バイオイメージングの落とし穴-

ターゲット
公開日

山城佐和子 生命科学研究科講師、渡邊直樹 同教授らの研究グループは、汎用されるアクチン結合プローブのLifeact が、アクチン線維流動の影響により細胞仮足の後方に偏る局在ミスを示すことを、実験と数理モデルにより明らかにしました。

定量的な蛍光バイオイメージングは、細胞が生きた状態における生体分子の時空間的情報を得るアプローチであり、生命科学の様々な分野で広く行われています。細胞内で生体分子を観察するには、目的の生体分子に結合する「標的結合型蛍光プローブ」を細胞内に導入し、可視化する手法がよく用いられます。目的の分子の動態を的確に解析するためには、蛍光プローブは、生体分子の細胞内局在を正確に反映する必要があります。

本研究成果は、定量イメージングに汎用される標的結合型プローブの正確性に対する注意喚起であり、また、Lifeact が細胞の先端から後方にかけて濃度勾配をもって分布することから、細胞内流動によって分子が濃度勾配を作るメカニズムの理解につながる発見です。

本研究成果は、2019年1月8日に、国際学術誌「Biophysical Journal」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.bpj.2018.11.022

Sawako Yamashiro, Daisuke Taniguchi, Soichiro Tanaka, Tai Kiuchi, Dimitrios Vavylonis, Naoki Watanabe (2019). Convection-Induced Biased Distribution of Actin Probes in Live Cells. Biophysical Journal, 116(1), 142-150.