ゼニゴケが遺伝子のオモテとウラを使って メスとオスを作り分けていることを解明 -性差を生み出す巧妙な「裏ワザ」が明らかに-

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河内孝之 生命科学研究科教授、岡橋啓太郎 同修士課程学生、中島敬二 奈良先端科学技術大学院大学教授、久永哲也 同博士研究員らの研究グループは、広島大学、近畿大学、豪州モナシュ大学と共同で、陸上植物に共通した雌性の分化制御遺伝子FGMYBを発見しました。

また、陸上植物の基部に位置するコケ植物のゼニゴケでは、FGMYB遺伝子の逆鎖にコードされる長鎖非翻訳RNA (long non-coding RNA)であるSUFを用いて、FGMYB遺伝子の発現を抑制し、オス個体における雄性分化を行っていることを明らかにしました。つまり、DNA二本鎖の表側と裏側を巧妙に使い分け、これを雌雄の性差を生み出すスイッチとして利用していることを示しました。

本研究成果は、陸上植物に共通した性分化の制御因子を世界で初めて同定したのみならず、それを用いた特異な性の切り換え機構を明らかにしたものであり、有性生殖の成り立ちと進化を解明する上で重要だと考えられます。また、植物に共通した性分化制御因子の発見は、効率的な育種や繁殖技術の開発といった応用につながることが期待されます。

本研究成果は、2019年1月4日に、国際学術誌「The EMBO Journal」のオンライン版に掲載されました。

図:ゼニゴケは、FGMYB遺伝子をつくるDNA二本鎖の表側と裏側を巧妙に使い分け、これを雌雄の性差を生み出すスイッチとして利用している。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.15252/embj.2018100240

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/235965

Tetsuya Hisanaga, Keitaro Okahashi, Shohei Yamaoka, Tomoaki Kajiwara, Ryuichi Nishihama, Masaki Shimamura, Katsuyuki T Yamato, John L Bowman, Takayuki Kohchi, Keiji Nakajima (2019). A cis‐acting bidirectional transcription switch controls sexual dimorphism in the liverwort. The EMBO Journal, 38(6):e100240.

  • 朝日新聞(1月17日 27面)に掲載されました。