目の丸い形ができる仕組みを解明 -「器官の形作り」の理解から再生医療への貢献に期待-

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永樂元次 ウイルス・再生医科学研究所教授、奥田覚 科学技術振興機構(JST)さきがけ専任研究者(兼・ウイルス・再生医科学研究所 共同研究員、理化学研究所 客員研究員)らの研究グループは、目の丸い形の元となる「眼杯組織」の形態が作られる仕組みを解明しました。

生物の形作りは、人の身体の発生や疾患などの様々な生命現象に関わるため、基礎研究と医療の両方にとって重要です。特に、試験管の中での「器官の形作り」を理解し操作することは、今後の再生医療に使用する組織の立体形状を制御するためには重要だと考えられています。

本研究グループはまず、複雑な眼杯組織の形が作られる仕組みを理解するため、実験で得た眼杯組織の情報を基にしてコンピューターシミュレーションを行いました。そして、眼杯組織の丸い形を作るためには、組織の場所ごとに細胞が異なる力を生み出す必要があると予測しました。また、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)を培養して作製した眼杯組織を使って、この予測を確かめました。

さらにその結果から、眼杯組織の丸い形が作られる際には、1つ1つの細胞が、眼杯組織全体の変形度合いを感じながら、その丸い形を微調整していることが分かりました。これらの発見は、「器官の形作り」に対する機械的な力の新しい役割を示しており、今後の再生医療に必要となる、試験管内での複雑な組織・器官の作製に役立ちます。

本研究成果は、2018年11月22日に、米国の国際学術誌「Science Advances」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1126/sciadv.aau1354

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/235255

S. Okuda, N. Takata, Y. Hasegawa, M. Kawada, Y. Inoue, T. Adachi, Y. Sasai and M. Eiraku (2018). Strain-triggered mechanical feedback in self-organizing optic-cup morphogenesis. Science Advances, 4(11):eaau1354.

  • 日刊工業新聞(11月22日 28面)および毎日新聞(11月23日 22面)に掲載されました。