関節リウマチの病態に関わる転写因子を同定 -炎症環境におけるT細胞の新たな機能解明に期待-

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吉富啓之 ウイルス・再生医科学研究所准教授(兼・iPS細胞研究所准教授)、戸口田淳也 同教授、小林志緒 医学研究科研究員(現・ジョスリン糖尿病センター研究員)、宮川文 同特定准教授(現・京都府立医科大学講師)、伊藤宣 医学研究科准教授、松田秀一 同教授らのグループは、関節リウマチの炎症環境において、Sox4という転写因子が鍵となって、ヘルパーT細胞が発症の重要な因子CXCL13を作ることを明らかにしました。

本研究成果は、2018年9月19日に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

吉富准教授

関節リウマチの患者さんの診療をする中で、現在の治療にもいまだ限界があり、関節リウマチがどのように起きてくるのかを、さらに明らかにしないと行けないと考え研究を行っています。これまでに、実際の病気で何が起きているのかを調べることで、「PD1(hi)CXCR5(-)」という特徴を持つヘルパーT細胞(Tph細胞とも呼ばれます)が、CXCL13というケモカインを作ることを見出してきましたが、今回、さらに研究を続けることで、この現象にSox4という転写因子が鍵となることを見つけることができました。今後も、実際の病気で何が起きているのかに注目して研究を進めていきたいと思います。

概要

関節リウマチは、関節の腫れから変形へと至る免疫の異常による全身性の病気です。先行研究では、リンパ球を集積させる因子であるCXCL13を作るヘルパーT細胞が、重要な役割を果たすことが明らかとなってきましたが、どのような遺伝子が鍵となっているのかはわかっていませんでした。

本研究グループは、炎症環境で発現が増加する転写因子を探し、Sox4という転写因子が鍵となることで、PD-1(hi)CXCR5(-)という特徴を持つヘルパーT細胞(Tph細胞)が、CXCL13を作ることを明らかにしました。さらに、罹患者の関節でもSox4が働くことでヘルパーT細胞がCXCL13を作り、リンパ球を集積させることで関節リウマチに関与していることがわかりました。

本研究成果により、炎症のある場所におけるヘルパーT細胞の新しい働き方が明らかになったことで、将来的に関節リウマチをはじめとした、免疫・炎症に関係する病気に対する新しい治療の開発が期待されます。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-018-06187-0

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/234599

Hiroyuki Yoshitomi, Shio Kobayashi, Aya Miyagawa-Hayashino, Akinori Okahata, Kohei Doi, Kohei Nishitani, Koichi Murata, Hiromu Ito, Tatsuaki Tsuruyama, Hironori Haga, Shuichi Matsuda & Junya Toguchida (2018). Human Sox4 facilitates the development of CXCL13-producing helper T cells in inflammatory environments. Nature Communications, 9:3762.

  • 読売新聞(9月22日夕刊 8面)に掲載されました。