ほぼすべてのフラボノイドを検出する技術を開発 -植物の機能性成分の研究が加速-

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荒武 農学研究科特定准教授の研究グループは、公益財団法人かずさDNA研究所、カゴメ株式会社と共同で、質量分析装置で得られる情報から、自然界に存在する約7,000種類のフラボノイドのほぼすべてを区別して検出できる技術FlavonoidSearchを開発しました。これまでは、存在量の多い数種類のフラボノイドのみが研究対象とされてきましたが、この技術により、微量のフラボノイドを検出したり、新規のフラボノイド成分の候補を発見したりすることが可能となり、植物の機能性成分の研究が加速します。

本研究成果は、2017年4月28日に英国の学術誌「Scientific Reports」誌でオンライン公開されました。

研究者からのコメント

本研究成果は、自然界に存在する多様なフラボノイド化合物の研究を加速するとともに、機能性のあるフラボノイドや有用植物資源の研究・探索などに用いることができます。またフラボノイドの合成経路を推定することで、特定のフラボノイドを多く含む機能性のある農作物(機能成分高含有農産物)を作り出すことにも役立つことが期待されます。

概要

フラボノイドは、植物が生産するポリフェノールの一つで、代表的なものとして、茶カテキン、大豆イソフラボン、花の色のアントシアニンなどがあり、抗酸化作用やホルモン様作用などを示すものがあることから、健康の維持・増進に役立つ機能性関与成分として注目されています。自然界には約7,000種類のフラボノイドが存在していますが、これまでは存在量の多い数種類のフラボノイドのみが研究対象とされてきました。

そこで本研究グループは、試薬として市販されている140種類のフラボノイド標準物質の質量分析装置で得られるパターンを精査し、人の手でルール化しました。フラボノイドの質量分析に関わる膨大な文献情報を取り入れてルールを検証し、そのルールを約7,000種類の既知構造にあてはめることで、質量分析装置で得られる情報からフラボノイド類を推定するデータ解析システムFlavonoidSearchを作成しました。

FlavonoidSearchを既存の予測システムと比較したところ、格段に高い精度でフラボノイドを判別することができました。パセリは抗酸化・抗がん作用のあるアピゲニンなど、フラボノイドを多く含む野菜として知られていますが、FlavonoidSearchを用いてパセリを解析したところ、これまで報告されていないフラボノイドの候補が10種類以上あることがわかりました。

図:代表的なフラボノイドの構造の例

フラボノイドは、二つのベンゼン環(C6)が三つの炭素(C3)で繋がったC6-C3-C6構造を基本骨格とする有機化合物の総称で、基本骨格に付加された水酸基(-OH)やその他の修飾の様式によって分類される。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-017-01390-3

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/224818

Nayumi Akimoto, Takeshi Ara, Daisuke Nakajima, Kunihiro Suda, Chiaki Ikeda, Shingo Takahashi, Reiko Muneto, Manabu Yamada, Hideyuki Suzuki, Daisuke Shibata & Nozomu Sakurai (2017). FlavonoidSearch: A system for comprehensive flavonoid annotation by mass spectrometry. Scientific Reports, 7, 1243.

  • 科学新聞(5月12日 2面)、新千葉新聞(5月9日)に掲載されました。