松波弘之 名誉教授、木本恒暢 工学研究科教授および西川博嘉 医学研究科教授が日本学士院賞を受賞しました

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 このたび、松波弘之 名誉教授、木本恒暢 工学研究科教授および西川博嘉 医学研究科教授が第116回(令和8年)日本学士院賞を受賞することになりました。日本学士院賞は、学術上特に優れた研究業績に対して贈られるもので、日本の学術賞としては最も権威ある賞です。

松波弘之 名誉教授および木本恒暢 工学研究科教授

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松波名誉教授
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木本教授

 松波名誉教授は、1939(昭和14)年生まれ、京都大学大学院工学研究科博士号を取得後、同大工学部助教授、米国ノースカロライナ州立大学客員准教授、京都大学大学院工学研究科教授を経て、2003(平成15)4月京都大学名誉教授の称号を受け、2018(平成30)4月より京都先端科学大学 ナガモリアクチュエータ研究所 客員教授、2022(令和4)4月より現在まで同大学特任教授を務めています。専門は半導体工学です。

 木本教授は、1963(昭和38)年生まれ、京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、住友電気工業株式会社、京都大学工学部助手、スウェーデン国リンチョピン大学物理学科 客員研究員、京都大学大学院工学研究科助教授を経て、2006(平成18)4月より現在まで同大学院工学研究科教授を務めています。専門は、半導体工学です。

 今回の日本学士院賞の研究題目は、「電力制御用炭化ケイ素素子の開発・実用化の研究(共同研究)」です。松波名誉教授と木本教授は、広禁制帯幅半導体である炭化ケイ素(SiC)の材料研究およびデバイス研究で多くの先駆的業績を挙げ、ケイ素(Si)による既存技術の限界、特に動作時の電力損失を格段に低減する革新的なSiCパワーデバイスを開発して世界を牽引しました。松波名誉教授は、1987(昭和62)年にステップ制御エピタキシー(SCE)法を世界で初めて提唱し、実現が困難とされていた炭化ケイ素の高品質単結晶化への道を開きました。その後、松波名誉教授と木本教授は、SCE法を用いて4H-SiCの結晶を再現性良く成長させることに成功し、従来の研究対象であった6H-SiCと比べ4H-SiCがパワーデバイスとして優れていることを発見しました。さらに木本教授は、4H-SiCを用いたショットキーバリアダイオードの実証化やSiCパワーデバイス製造にかかわる多くの基本技術の確立に貢献しました。現在SiC半導体の市場は成長を続け、電車の走行電力約3割の削減を達成し、今後は電気自動車の航続距離1割向上への貢献も期待されています。松波名誉教授と木本教授による研究は脱炭素社会の実現に不可欠な技術基盤を提供するものです。

 なお、2名の卓越した業績に対し、松波名誉教授は、2002(平成14)年 文部科学大臣賞(研究功績賞)、2013(平成25)年 朝日賞、2016(平成28)IEEE David Sarnoff Award、2017(平成29)年 本田賞、2023(令和5)IEEE Edison Medal 2023など、多数の賞が授与されています。木本教授は、2020(令和2)年 文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)、同年 山崎貞一賞、2024(令和6)IEEE Andrew S. Grove Award、2025(令和7)年 紫綬褒章、同年 SSDM Award 2025など、多数の賞が授与されています。

西川博嘉 医学研究科教授

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西川教授

 西川教授は、2002(平成14)年に三重大学大学院医学系研究科を修了し、医学博士の学位を取得しました。その後、三重大学医学部附属病院内科医員、米国スローン・ケッタリング記念がんセンター博士研究員、三重大学大学院医学系研究科講師および准教授、大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任准教授を経て、現在は、国立がん研究センター研究所腫瘍免疫研究分野長ならびに先端医療開発センター免疫トランスレーショナルリサーチ分野長、名古屋大学大学院医学系研究科教授および京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センター教授を務め、多拠点で活動を展開しています。

 今回の日本学士院賞の研究題目は、「免疫ゲノムがん進展仮説の樹立とがん免疫精密医療への展開」です。西川教授は、患者生検組織などの微量な生体試料から生きたまま免疫細胞を抽出して保存・測定する手法を開発し、網羅的な免疫解析とゲノム解析を融合した統合解析を可能にしました。西川教授は、本手法をがん微小環境に応用することで、がんのゲノム変異が細胞増殖に作用するだけでなく、同時に周辺免疫細胞にも働きかけ直接的に免疫逃避環境を誘導することを様々ながん種で証明しました。これらの研究成果から西川教授は、がん細胞のゲノム異常と周辺免疫細胞が互いに相互作用・選択圧を与えながら発がんおよびがんの進展が生じていると考え、その仕組みを「免疫ゲノムがん進展仮説」として提唱しました。この概念は、がん免疫学を大きく前進させ腫瘍生物学の新たな分野を開拓したといえます。さらに西川教授は本仮説に基づき、ゲノム変異を標的とした分子標的治療とがん免疫治療の融合(がん免疫精密医療)の技術基盤を新たに構築し、現在臨床応用に挑んでいます。

 なお、西川教授の卓越した業績に対し、2020(令和2)年 American Association for the Advancement of Science (AAAS) Elected Fellow、2023(令和5)年 高松宮妃癌研究基金学術賞、2024(令和6)年 上原賞など、多数の賞が授与されています。

関連リンク

日本学士院賞授賞の決定について(日本学士院)