紹介展示「学術探検と遺伝資源-田中正武アーカイブズとNBRP・コムギリソース」を開催しました

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 農学研究科では、コムギジーンバンク事業(NBRP・コムギ)の紹介展示「学術探検と遺伝資源-田中正武アーカイブズとNBRP・コムギリソース」を、2023年10月12日〜14日、北部構内旧演習林事務室ラウンジにて実施し、約150名が観覧しました。

 本展示は、農学研究科に田中正武博士(本学名誉教授、1920年-2001年)の研究資料が寄贈されたことから実現しました。田中博士は、1959年から1989年にかけて10回以上海外学術調査に携わり、ユーラシア各地、アフリカ、南米において栽培植物および近縁野生種の調査と遺伝資源収集を行いました。収集した遺伝資源のうち、特にコムギとコムギ近縁野生種を系統化し、カタログに整理し(1983年当時、6774系統を収載)、世界規模のムギ類ジーンバンクを形成する基礎を築きました。

 本展示は、寺内良平 農学研究科教授を委員長とした展示実行委員会により、企画・実施しました。4部構成となっており、第1章では田中博士の海外調査における植物遺伝資源収集について、実際に使用された地図、フィールド・ノート、現地の写真、調査報告書などの資料を用いて紹介し、第2章では収集された遺伝資源を分類・系統化し、国内外の研究利用に供するジーンバンク事業(NBRP・コムギ)で維持されている系統の構成、収集された遺伝資源の系統化および保存作業について、第3章ではジーンバンク事業で維持されている系統を用いた近年の研究展開、第4章では京都大学研究資源アーカイブ事業による、田中博士の研究資料の整理についてをそれぞれ紹介しました。

 各展示には、遺伝資源がどのような環境から収集されたかを記したフィールド・ノートの複製品や、調査写真を20枚ごとのスライド・シート単位で印刷した写真帳を作成し、手元で直接閲覧できるようにしました。そのため、観覧者が時間をかけて資料を読み込む姿が多数見受けられました。

 第4章で展示した通り、田中博士の研究資料は、京都大学研究資源アーカイブ事業により目録を作成しており、2024年度にはオンライン公開を予定しています。本目録により、遺伝資源収集に関する資料精査の効率化が期待されます。収集に際し記録された、生育環境の特徴、現地の農業慣行や栽培特性は、NBRP・コムギが保有する、1万点を超える遺伝資源の中から、研究課題により適した系統を選択する助けとなります。遺伝資源には、特定地域で長年栽培され、地域の環境特性と文化的希求性によって形成された地方品種や、紛争等の困難にある地域で採集されたコムギおよびコムギ近縁野生種が含まれます。これらを、気候変動や病害発生に対応した品種育成、紛争終結後の農業再建に提供することで、世界の食の安全保障に寄与したいと考えています。

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過去に田中博士の研究室があった、本展示会場の旧演習林事務室
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趣旨説明と展示構成解説
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海外調査における植物遺伝資源収集に関する資料(第1章)
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 書き込みが残る地図や、調査時に撮影した写真を閲覧する観覧者(第1章)
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地中海沿岸地域のコムギ近縁野生種の分布図を解説する寺内教授(右)(第1章)
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フィールド・ノートの記載を解説する吉田健太郎 農学研究科教授
(左)と、Nils Stein 博士(ライプニッツ植物遺伝作物学研究所、中央)(第1章)
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ジーンバンク事業(NBRP・コムギ)について紹介(第2章)
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遺伝資源の系統保存作業の解説と、実際に使用している道具類(第2章)
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近年の研究展開を紹介(第3章)
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田中博士の研究資料の整理(第4章)

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