倉本尚徳 人文科学研究所准教授および依光英樹 理学研究科教授が、第16回(令和元年度)日本学士院学術奨励賞を受賞(2020年1月14日)

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このたび、倉本尚徳 人文科学研究所准教授および依光英樹 理学研究科教授が第16回(令和元年度)日本学士院学術奨励賞を受賞することになりました。

同賞は、優れた研究成果をあげ、今後の活躍が特に期待される若手研究者に対して与えられるもので、日本学術振興会賞を受賞した研究者の中から6名以内が選ばれるものです。

授賞式は2020年2月18日(火曜日)に日本学士院で行われる予定です。

倉本尚徳 人文科学研究所准教授

倉本准教授

倉本准教授は、1998(平成10)年東京大学文学部を卒業し、2011(平成23)年東京大学大学院人文社会系研究科にて課程博士(文学)を取得。龍谷大学アジア仏教文化研究センター博士研究員、ドイツハイデルベルク学術アカデミー短期研究員、台湾中央研究院歴史言語研究所助研究員を経て、2019(平成31)年京都大学人文科学研究所准教授に採用され、現在に至っています。

今回の受賞題目は「石刻資料の網羅的収集に基づく中国六朝隋唐仏教史の再構築」です。

倉本准教授の全700頁余の単著「北朝仏教造像銘研究」(法蔵館、2016年)を含む研究成果は、5世紀から9世紀(北魏から唐代)の中国仏教思想の歴史を、伝記文献資料のみならず膨大な件数の新出土石刻資料を遍く渉猟し、使用語句の解読・分析を通じて仏教信仰の多様性と独自性を包括的かつ普遍的にとらえた画期的な研究です。

倉本准教授は、「義邑(ぎゆう)」、「邑義(ゆうぎ)」、「社邑(しゃゆう)」と呼ばれた造像に関係した人々や宗教結社を時代別・地域別に分類し、かれらの繁雑な肩書から拮抗と融合の歴史を繰り返した仏教と道教の信仰実態を解明しました。また石刻の銘文を正確に読み取り、刻まれた仏教経典で実践性の強い経典ほど中国撰述の経典(偽経)が多く含まれること、あるいは浄土教主の仏名の変化から阿弥陀仏信仰の普及の時期や禅師たちの活動に関する定説の修正をせまるなど、中国仏教史にかかわる新説の提示によって国際的に高い評価を得ています。

新たな手法をもって学界を牽引する倉本准教授により、今後、中国思想史・宗教史研究が大きく進展することが期待されることから、今回の受賞となりました。

依光英樹 理学研究科教授

依光教授は、1997(平成9)年京都大学工学部を卒業、2002(平成14)年同工学研究科博士後期課程を修了し、博士(工学)の学位を取得。東京大学大学院理学系研究科博士研究員を経て、2003(平成15)年に京都大学工学研究科助手に採用され、2008(平成20)年に同准教授、2009(平成21)年に同理学研究科准教授を経て、2015(平成27)年に同教授となり、現在に至ります。

今回の受賞題目は、「非芳香族化を活用した新規有機合成反応の創出」です。

身の回りの人工的な有機分子は全て有機合成反応によって製造されており、有機合成反応は豊かな現代社会を支える原動力です。依光教授は、新規有機合成反応の開発において、縦横に有機金属化合物、遷移金属触媒、高反応性化学種を駆使し、さまざまな業績を上げてきました。特に最近の芳香環メタモルフォシスの研究は、あたかもコロンブスの卵のように「本来優れた安定性に特徴づけられる芳香環を切断し、別の環骨格へ作り変える」という概念的転換に基づくものです。また、芳香族性の喪失を含む過程を巧みに利用し、従来の遷移金属触媒を用いるクロスカップリング反応などとは根本原理を異にする芳香環連結法を開発した点も、概念の革新性が特筆されます。こうした分子変換の考え方は、その指導原理の新規性、明瞭性に加え、金属を用いないという意味での環境関連の優位性などから、国内外への波及効果が大きく、関連研究が盛んになり、依光教授はその先鞭をつけた若き旗手と言うべき存在となっています。その研究姿勢は一貫して新概念、新潮流の創出への意欲が横溢しており、今回の受賞となりました。

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