第1回は1969年秋、大学紛争のさなか、湯川秀樹先生、朝永振一郎先生を講師に招き、開催されました。以後48年、回を重ねること今回で56回に達しました。講演のテーマは必ずしも既存の専門にとらわれず、明日の学問への展望をひらくものをと心がけて選ばれています。
本講演会は、専門の研究者だけでなく学生の参加も多く、またもとより公開ですので、少数ながら熱心な一般聴衆の方々にも好評を博しています。
基本情報
- 吉田キャンパス
- 在学生の方
- 一般・地域の方
イベント内容
講演プログラム
「超伝導とボーズ・アインシュタイン凝縮」(15時05分~16時05分)
松田 祐司 京都大学理学研究科教授
19世紀まで、物質を冷却しても凍りつくだけで何も起こらないと考えられていました。20世紀になってヘリウムの液化に成功し、人類は宇宙のどこにも存在しない極低温を人工的につくり出すことができるようになりました。その後の研究で、絶対零度(−273度)付近で、電気が物質中を永久に流れ続け、金属は空中に浮き、液体ヘリウムは容器の壁を這い上がってくるなど信じられない奇妙な現象が次々と発見されました。ここで紹介する超伝導現象は、2つの粒子が対を組むことによって起こる量子現象です。この現象は中性子星から冷却原子にいたるまで、10億度の超高温から絶対零度まで10億分の1度の超低温までの、実に20桁にわたる温度範囲にわたって実現される物理学の中で最も劇的な現象の一つです。本講演では、高温超伝導体や従来のものとは対形成のメカニズムの異なる風変わりな超伝導研究の最前線を紹介します。
「 ゆらぎは語る-人工量子系における非平衡物理学 」(16時10分~17時10分)
小林 研介 大阪大学理学研究科教授
近年のナノテクノロジーの発展のおかげで、私たちは様々な形状を持つ小さな電子回路を作製できるようになってきました。回路のサイズを数μm~数nm程度にまで小さくすると量子力学的な効果が顕著に現れるようになります。したがって、そのような回路を人工量子系と呼ぶことができます。例えば、人工量子系を自由にデザインし制御することによって、電子を文字通り一粒ずつ動かすことや、電子の波としての性質をコントロールできるようになるのです。このような研究手法は「精密物性科学」と呼べるような分野を生み出しました。実際、制御性の高い人工量子系では、通常の測定では無視されるような「ゆらぎ(雑音)」でさえも定量的に扱うことができ、そこから本質的な情報を引き出すことができるのです。本講演では、ゆらぎを高精度に測定することによって非平衡物理学にアプローチした私たちの研究について紹介します。
備考
京都大学理学部、財団法人湯川記念財団
京都大学理学研究科 社会交流室
Tel: 075-762-1345
Fax: 075-762-1346
E-mail: mail*cr.sci.kyoto-u.ac.jp (*を@に変えてください)