京都人類学研究会11月例会を開催します。奮ってご参加ください。
基本情報
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イベント内容
発表者
熊田陽子 (首都大学東京人文科学研究科・日本学術振興会特別研究員SPD)
コメンテーター
新ケ江章友 (大阪市立大学創造都市研究科准教授)
要旨
都市部を中心に巨大な市場を形成する日本の性風俗産業は、「裏(社会)」といったイメージで周辺化されることが少なくありませんが、一部を除いて通称「風営法」(あるいは「風適法」)に則った適法な運営を行っており、多くの人々が関与しています。その意味で、適法的運営から成る性風俗産業は、現代日本の公的領域-すなわち、政治・経済・文化(ここでいう「文化」とは、日常の文化でもあり、日常を創り出す法制度の文化でもある)-に包摂ないし接合された、「性風俗世界」と呼べるような存在と理解できるでしょう。
本発表では、性風俗世界に関わる人々の中でも、そこで働く女性たち(「おんなのこ」)に焦点を当てます。「おんなのこ」としての日常では、さまざまな関係が作られます。客との関係においては、生殖と切り離された「遊び」としてのプレイを通じて、客を楽しませることが仕事となります。他方、同僚の「おんなのこ」との関係では、なるべく多くの客を獲得することを目的とした、いわばゲームが展開されます。(ただしライバル関係にありながらも、「おんなのこ」たちは、笑いの実践を駆使することでつながりを作ることもあります。)こうした「遊び」やゲームという「おんなのこ」の日常の基盤となるのが、人々の関係作りについて都市空間がもたらす可能性です。「おんなのこ」である時、その人は、自分が持つ複数のネットワークの存在や内実を秘匿し、部分的「自己」において他者と関係を作ります。それは、見知らぬ大量の人々が密集する都市で、人々の群れに隠れることによってこそ可能となります。これを都市的-部分的「自己」と規定し考察を行います。
なお、発表の中では、現在調査研究を実施しているオランダ・アムステルダムの合法的赤線地帯にある通称「飾り窓」で働く人々にも触れ、東京の事例で確認した関係性のあり方と比較検討を行いながら、今後の研究の方向性について言及します。
備考
代表: 平野(野元)美佐
E-mail: kyojinken2016*gmail.com (*を@に変えてください)