役員会 第58回 平成18年3月29日(水曜日)開催
■別紙1
平成18年度 予算編成方針
京都大学
- 1.はじめに
- 2.教育研究事業等への配分
- 3.平成18年度予算編成の基本的な考え方と背景
- 4.戦略的・重点的配分に必要な経費のあり方
- 5.予備費の確保
- 6.全学共通経費のあり方
- 7.受託事業等経費
- 8.施設費事業費
- 9.予算の弾力的な運用
- 10.資金管理・運用
- 11.新たな資金制度
- 12.経費の削減
- 13.平成19年度以降の予算編成について
- 14.おわりに
平成18年度 予算編成方針
1.はじめに
平成16年度の予算編成にあたっては,法人化初年度であることからこれを移行期として捉え,激変緩和に配慮した財政措置を講じることにより,教育・研究の実施に及ぼす影響を最小限に抑える配分方針を採用した。
平成17年度からは,運営費交付金に対して効率化係数による削減率の適用,附属病院に対して経営改善係数による増収ノルマの導入,加えて授業料標準額の改定による運営費交付金の減額等により,「平成17年度予算編成方針」に示されたような厳しい財政運営を強いられることとなった。
平成18年度においても,効率化係数及び経営改善係数等によりさらに厳しい運営が求められることは確実である。
予算配分における国立大学法人の裁量は法人化により拡大されたが,その一方で,予算執行における説明責任は一層強まった。自らの事業内容,経費,成果について説明責任が果たせない国立大学法人に対しては,運営費交付金の配分額を削減していくことにより,自主・自律を促す考え方が,法人化の基本に捉えられている。
このような状況を踏まえて,教育研究基盤の維持・強化を目的とした競争的資金獲得の方策,寄附金募集の拡大等,自己収入の増加に努める。さらに,現行の予算執行の無駄を除くなど経費の節減に努めつつも,学生に対する教育等のサービスを低下させないよう配慮する。また,最近の政府における公務員の定員削減や総人件費抑制の方針を勘案すれば,本学の教育・研究・医療活動の基盤を成す人材を確保しつつ,人件費の費用対効果を高める取組みが必要である。
これらの客観的な情勢と考え方を踏まえ,本学の中期目標・中期計画を達成するとともに,持続的な発展に繋げるための重点方策に資金を積極的に投入しつつ,合理的な根拠に基づいて効果的かつ効率的な資金の学内配分を図っていくことが一層強く求められる。
以上に鑑み,平成18年度の予算編成方針は,自律的な財政運営へ転換するための移行期と位置づけ,「平成17年度予算編成方針」の趣旨を踏まえつつ,平成19年度以降に中長期的観点に立って取り組むべき予算編成上の重点課題についても明記することとする。
2.教育研究事業等への配分
平成16・17年度においては,人件費と物件費を区分して管理してきた。この措置の見直しについては今後も検討を進めていくこととし,平成18年度においてはこれを維持する。
(1)人件費の配分
常勤教職員に係る経費は,役員報酬・教員給与・職員給与・超過勤務手当に区分し,大学全体で一括管理する。休職者給与,非常勤職員,外国人教師,外国人研究員等については,所要額により部局へ配分する。
なお,人件費枠として管理する金額に剰余が生じた場合には,前年度と同様に剰余金として繰り越し,次年度以降の給与改定財源等の予備費として確保していく。
(2)物件費の配分
平成16年度に講じられた財政上の激変緩和措置について,平成17年度にその一部を見直した。平成18年度においては,平成16年度の決算に基づく財務分析結果を踏まえ,更に見直しを進めることにより,大学全体として一般管理費の比率を圧縮し,本学の使命である教育研究活動に要する経費(教育研究経費)の比率をより高めていく。各部局においても,部局の決算分析に基づき,教育研究の実施を重視した予算編成を図っていくことが求められる。
- ①教育・研究環境維持経費
大学における教育・研究環境を維持するために必要な経費として配分されるものである。
○基盤教育研究経費
大学運営及び部局運営の基盤を成し,教育・研究を支えるための主たる経費であることを認識し,教育・研究の質の向上を図るために,一層効果的・効率的な経費の執行方法を追求するものとする。また,各部局への経費配分に当たって,その一部を部局長裁量経費として明示し,部局長の責任とリーダーシップに基づく部局固有の重点推進事業等に充当し得る制度を確立する。
○義務的経費
消費税,法定監査費用,損害保険料等の平成18年度も必要となる経費については,所要額について精査した上で,義務的経費として計上する。
平成18年度以降の電子計算機借料については,原則として義務的経費から除外し,圧縮対象経費とする。なお,具体的な対処については,情報環境機構における専門的立場からの検討結果を待って,財務委員会において議論する。 - ②戦略的・重点的経費
法人化により大学の財務運営の裁量が大幅に拡大し,これまで以上に各大学における戦略的・重点的な経費の配分が可能になるとともに,国民の税によって支えられる大学として財務運営状況の説明責任が求められている。本学の中期目標を達成するための中期計画に沿った取り組みの進捗状況を点検しつつ,本学における教育・研究・医療活動の活性化,さらには個性化を図っていくために戦略的・重点的に配分すべき経費を一層拡充していく。 - ③特別教育研究経費
概算要求に基づき措置され,成果を強く求められるプロジェクト型経費であることから,基本的に事業を行う部局に配分することとする。なお,共通的な経費については当該部局の負担を求めることとする。
3.平成18年度予算編成の基本的な考え方と背景
- (1)自己収入及び競争的資金の確保の重要性
国立大学法人の自己収入は運営費交付金の算定における基礎となる重要な要素であるため,平成18年度においても,各予算配分単位に係る授業料,入学料,検定料,講習料,施設利用料,売払い収入等の収入目標額を設定し,各部局において目標達成のために積極的に取り組むことが重要である。
なお,部局固有の雑収入については,収入の種別毎に部局の努力に配慮した予算配分制度を平成17年度に構築したところであり,各部局がこの制度を活用して,より一層の収入増を図っていく。
また,近年,政府の方針として,基盤的な経費である運営費交付金が削減される一方,競争的資金の拡充が促されているところであり,本学においても当該経費を積極的に獲得するための支援体制を整備する。 - (2)効率化係数への対応
運営費交付金に及ぼす効率化係数導入の影響は,自己収入の増収を図ることによって相殺可能であるが,毎年度の正確な増収額を事前に見積もることは困難であるため,当初予算の編成時においては,効率化係数相当額を控除した運営費交付金を基礎に配分せざるを得ない。
この場合,効率化の対象となる経費を定率圧縮することを基本としつつ,法人化の趣旨に照らして,本学の戦略的視野に立った予算配分を実現していくことが重要である。 - (3)特別教育研究経費
平成17年度から概算要求対象の枠組みとして特別教育研究経費が導入された。この経費は,特定の事業に対して交付されるプロジェクト型経費であり,時限内に所定の成果を挙げることが求められる。
また,平成19年度概算要求に当たっては,従来の予算要求方式を改め,関連情報を積極的に収集するとともに,学内で厳正に審査し予算獲得の可能性の高い要求事項に絞り込む。 - (4)病院経営の改善
医学部附属病院は,良質な医療人の養成と供給を担い,新しい治療法の開発等を行う教育研究の場であると同時に,診療行為の実施の場として,高度先進医療の実施,地域医療への貢献,医療の質や安全の確保等,多元的な役割と機能を備えているため,病院経営の改善を図るための克服課題として指摘されることが数多く存在する。
また,平成17年度から附属病院収入に対する経営改善係数の導入により,平成16年度病院収入予算額の2%相当額が毎年増収ノルマとして課され,将来の病院運営はすべて自己収入で賄うことが求められている。
このような状況下において,病院運営が大学全体の財政を圧迫することがないよう,一般診療に必要な経費は縮減対象とせずに配分する。医学部附属病院は,診療収益や診療費用等の分析を病院経営の観点から系統的に実施し,その結果を病院経営における財務状況の改善と安定化に反映できるよう,引き続き自助努力が必要である。
4.戦略的・重点的に配分する経費のあり方
本学における教育・研究・医療活動の個性化と活性化を図っていくためには,戦略的・重点的に配分する経費のさらなる拡充が必須であり,下記の方針の下に,総長や役員会のイニシアティブと責任によって特定課題の教育・研究・医療活動並びにそれらを支える基盤体制へ重点的に予算を配分する。
- (1)平成17年度においては,総長裁量経費枠の相対的な増額を図りつつ,事業内容の効果や目標達成の客観的評価をすることなく継年的に措置してきた経費の排除等,対象事項の内容を見直すことにより,総長のリーダーシップを確立するための改善を行ったところである。総長のリーダーシップの下に,京都大学として新たな教育研究領域を開拓し,発展させるための取り組みを財政面で支援することにより,教育・研究・医療活動のさらなる質の向上を図る。
- (2)平成17年度に「戦略的・重点的配分に必要な経費」の一環として確保した学生支援経費を,平成18年度においても継続的に重点配分する。
- (3)また,若手研究者の研究に対する奨励経費についても,平成18年度においても継続的に重点配分する。
- (4)全学的な重点戦略に基づき役員会で精選する教育研究課題に対して「重点戦略経費」を措置する。
5.予備費の確保
収入見込予算額に対する収入減,自然災害による被害や訴訟への対策等,予測できない事態に対するリスク管理のための予備費を従前どおり確保する。
また,緊急対応が求められる事態が発生した場合に,機動的な予算執行を可能とし,事後報告等により予備費の運用における透明性を確保する。
6.全学共通経費のあり方
全学共通経費は,大学の管理運営や共同利用施設に係る経費,複数部局が共同で実施する新たな事業に係る経費等,大学として支援する必要がある事業に対して措置されるべきものである。
しかしながら,平成17年度以前においては,必ずしも本経費の性格に合致しないような事項の申請も多く,平成18年度以降はこれまでの方式を抜本的に見直し,申請事業の目的と効果をより明確にし,当該事業の意義が確められた事業にのみ予算を措置するなど,全学共通経費が本来の趣旨に添って効果的に活用されるような運用の在り方について早急に検討する。さらに,当該事業の完了後に成果報告書の提出を求めて,事後評価を併せて実施して結果を公表する。また,従来からの部局配分予算では措置できなかった全学的に真に必要な経費に対しては,学内協力的な予算枠を設け対応することを検討する。
本経費の充実には,より一層の資金確保が必要であり,財務委員会や企画委員会における人件費,物件費及び定員管理等についての中長期的な方針の検討状況を踏まえつつ,間接経費の拠出率や寄附金のオーバーヘッド率の見直し,更には新たな経費からの充当も視野に入れ,制度改革に着手する。
7.受託事業等経費
効率化係数により運営費交付金が毎年減額されるなか,教育研究環境の質の維持,さらには充実を図るためには,外部資金の確保が重要になる。
部局あるいは分野毎に実態の異なる外部資金の獲得について,戦略的かつ効果的獲得を支援する全学的な体制を早急に整備する。
また,外部資金獲得に対する部局や個人のインセンティブを高める方策についても早急に結論を得て実施する。
8.施設費事業費
平成17年度までは,国立大学等施設緊急整備5か年計画(平成13年4月策定)に基づき,施設の重点的・計画的な整備が実施されてきたが,今後も次期科学技術基本計画に基づく施設整備が継続される見込みである。本経費は,使途を指定して交付されることから,原則として指定された施設整備事業に配分する。また,大学の現状を踏まえつつ,次期科学技術基本計画の動向を見据えた戦略のもとに,新規事業費の獲得を図る。
9.予算の弾力的な運用
特別教育研究経費に見られるような成果進行基準の導入による予算の弾力的な運用を可能にする仕組み等を明文化した「国立大学法人京都大学の運営費交付金に関する取扱要領」及び「国立大学法人京都大学の成果進行基準取扱要領」を平成17年度に定めた。これらとは別に,目的積立金の活用と配分の方法については,本学における財務戦略を勘案しつつ,平成18年度に結論を得る。
10.資金管理・運用
資金(運営費交付金,学生納付金,附属病院収入,その他の収入,寄附金,受託研究等,施設費,承継剰余金,競争的研究資金等)は安全・確実に管理し,精度の高い資金繰りを行わなければならない。平成18年度においては,平成17年度と同様に,金融機関等が元本を保証する運用商品により効果的・効率的に資金運用を図り,安全で確実な運用益(預金等の利息)の確保に努める。
資金運用に際しては,不正防止のための牽制体制を確保するとともに,社会からの疑念を生じないよう,現金を扱う部署と運用を行う部署を明確に区別し,透明性の確保と積極的な運用を図る。
11.新たな資金制度
大学運営をより効果的・効率的に行うための財政面での取組みとして,大学の資金・資産活用や財源の獲得による新たな資金制度を創設する。
- (1)学内向け貸付金制度
各予算配分単位における資金の過不足を複数年度に亘って平準化し,配分予算や外部資金等によっては資金調達が困難な施設や大型設備の整備等を目的として,必要な経費を学内向けに貸付け,一時的に多額の資金を必要とする部局独自の大規模事業計画を支援する「学内向け貸付金制度」を平成18年度に創設する。そのための財源は全学共通経費等をもって充てる。また,各部局を対象として貸付金の要望調査を実施し,その結果を踏まえて運用方法を策定する。 - (2)学内協力積立金制度
学内の複数部局が積立金を拠出することにより,数年ごとに積立金の中からまとまった資金の配分を受け,部局における大型事業等の円滑な実施に充当できる「学内協力積立金制度」を平成18年度に創設する。この積立金の目的として,学内施設の維持管理(営繕含む)や大型設備等の新規導入または更新等が想定されるが,各部局を対象として積立金の要望調査を実施し,その結果を踏まえて制度を策定する。 - (3)教育研究運営資金制度
パートナー企業の支援を受け,パートナー企業とともに学生支援及び教育環境の充実を進めていくことを目的とした「京都大学アカデミックパートナーズ(KAP)」の検討が進められているが,今後とも新たなリソースを開拓・開発し,それらを活用することにより,大学全体のための教育研究運営資金の獲得に努力し,教育研究等の充実を図る。
12.経費の削減
法人化による会計制度の変更に伴い,使い切り予算という視点を脱却し,経費削減に積極的に取り組むことが一層重要となってきており,経費削減努力により,本学の教育・研究・医療活動を積極的に展開していくための財源を捻出していくことが求められている。
このため,部局横断的に節減可能な項目の洗い出し,経費削減を目的とした日常業務チェック体制の構築等の工夫を引き続き行っていくことが求められる。
具体的には,各部局における同一物品等の一括購入の促進(文房具等),共同利用可能な物品等の重複購入の排除(ソフトウェアのライセンス契約等)等による経費削減をより一層行っていくことが必要である。
平成18年度においては,運営費交付金が逓減していく状況を厳しく認識し,大学全体として取り組むべき経費削減対策について積極的に具体的な検討を行い,中長期的な観点に立った経費削減計画をとりまとめていくこととする。
13.平成19年度以降の予算編成について
- (1)財務戦略の確立
法人化に伴い各国立大学の財務運営における裁量が大幅に拡大した反面,各国立大学では財源を安定的に充実・確保し,計画的に経費を削減し,効果的に資源配分を行っていくことが重要となる。このため,運営費交付金が逓減していく厳しい状況の中においても,中期目標・中期計画に基づいて教育・研究・医療活動を着実に遂行し,大学全体の継続的な発展を図っていくために,中長期的な財務戦略を早期に確立する。 - (2)決算ベースの予算配分への移行
法人化により,これまでの単式簿記,現金主義の官庁会計から複式簿記・発生主義に基づく国立大学法人会計に移行し,毎年度の決算において,貸借対照表や損益計算書等の財務諸表を作成し,広く公表することとなった。これにより,各国立大学の財務状況が明らかになり,その決算結果について強く説明責任が求められる一方,他大学との財務状況の比較や財務指標による客観的な評価が行われるようになってきている。
このような状況下においては,毎年度の決算結果について徹底的な財務分析を行い,今後の財務運営の改善につなげ,社会への説明責任を果たしていくことが重要である。このため,平成18年度の予算編成においては時間的な制約から決算結果を十分に反映することはできないが,平成19年度以降の予算編成においては,これまでの前年度実績を主にベースとした予算編成から脱却し,各部局の予算の執行状況や教育研究活動の状況等を踏まえて,戦略的に予算配分を行っていくこととする。このため,平成17年度の決算後すみやかに,決算結果の分析を徹底的に行い,各部局に対する予算配分について聖域なく根底から見直すこととし,可能なところから実施する。 - (3)人件費・物件費の区分
平成18年度までは,人件費の増加による物件費枠の圧迫を防止し,雇用関係を適切に維持すること等を目的として,人件費と物件費を区分して管理するところである。しかし,法人化による大学の裁量権の拡大を享受し,より弾力的な執行を可能とするため,財務委員会及び企画委員会における人件費,物件費及び定員管理等についての中長期的な方針の検討を踏まえつつ,人件費・物件費の概念を明らかにした上で,その運用についてのさらなる弾力化を検討する。
14.おわりに
本学も含め,法人化後の国立大学は極めて厳しい財政環境に置かれているが,全学構成員の創意と工夫にもとづいた積極的な取り組みを進めていくなかで,法人化のメリットを最大限に引き出していくことが必要であり,平成18年度予算の編成作業より可能なものは早期に実施する。また,「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)において示されている総人件費の削減に対応していくため,中・長期的な人件費戦略を検討する。更に,本学における財務戦略を早期に策定し,中・長期的な大学の発展を見すえて予算編成の在り方について今後とも積極的に見直しを図っていくこととする。