堀内 昶名誉教授が紫綬褒章を受章(2007年4月29日)

堀内 昶名誉教授が紫綬褒章を受章(2007年4月29日)
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 このたび、我が国学術の発展のため顕著な功績を挙げたことにより、堀内 昶名誉教授に紫綬褒章が授与されました。

 以下に略歴、業績等を紹介します。

 堀内 昶(ひさし) 名誉教授は、昭和40年に東京大学理学部を卒業、同大学大学院理学系研究科に進学し、同45年に理学博士の学位を授与されました。その後、昭和45年京都大学基礎物理学研究所助手、同48年同理学部助手、同52年同助教授、平成7年大学院理学研究科助教授に配置換、同8年同教授に就任、同18年に定年退職後、京都大学名誉教授となり、同年より大阪大学核物理研究センターの協力研究員として研究活動を続け、現在に至っています。

 堀内名誉教授は、永年にわたり、原子核物理学の理論的研究を行い、重要な研究業績を数多く挙げ、基礎物理学の発展に大きく貢献してきました。特に、原子核の構造および反応機構の解明に力を入れ、軽い原子核のクラスター構造と反応の分野において多数の先駆的で重要な研究を行い、クラスター研究グループの指導的研究者として活躍してきました。また、原子核の構造と反応を統一的に扱うことが可能なミクロな量子多体系の新理論である反対称化分子動力学法を構築し、不安定核を含む様々な原子核の実験結果の理論的分析と予言に多大な成功をおさめるなど、原子核物理学の理論と実験の両面において大きな貢献をしてきました。

 まず、酸素、ネオン原子核の励起状態に関する反転2重項による説明により、現代的なクラスター物理の基盤を与え、次いで、共鳴群法と生成座標の方法の同等性を明らかにし、微視的クラスター模型による研究の隆盛をもたらしました。その後、多体クラスター模型の構築や、原子核間ポテンシャルの微視的な理解などの研究を進め、原子核の性質を理解する上で平均一体場の形成とともに離合集散のダイナミクスが本質的に重要であることを明確にし、その結果、軽い原子核においてクラスター構造は、殻構造に並ぶ基本的な要素と考えられるに至りました。更に、原子核衝突のシミュレーションを用いた研究へと進み、重イオン衝突の初期段階からフラグメント生成に至る過程を、平均場ダイナミクスからクラスター形成に至る相関構造の変化と捉え、量子力学的な分子動力学理論である反対称化分子動力学法を構築し、原子核物質の性質や多重破砕過程を理論的に解明するとともに、不安定核を含む様々な原子核の実験結果の理論的分析を行い、殻構造やクラスター構造など、原子核の多様な存在形態を、よりミクロな自由度から解明するなど、原子核物理学の重要で新たな潮流を切り拓いてきました。

 数多くの国際会議において招待講演や基調講演を行い、自らも4回の国際会議を主催し、国内では、京都大学基礎物理学研究所、大阪大学核物理研究センター、理化学研究所、湯川財団、理論物理学刊行会の運営に携わるなど、国内外での原子核物理分野の発展と基礎科学の発展に広く貢献しています。

 これら一連の業績が高く評価され、平成8年に日本物理学会論文賞、同12年に仁科記念賞を受賞されています。